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2013-08-12 09:00

(連載)集団的自衛権行使に「自国と密接な関係」は不要(1)

高峰 康修  日本国際フォーラム客員主任研究員
 集団的自衛権の行使を可能にするための憲法解釈変更をめぐっては、新しい内閣法制局長官に、集団的自衛権行使容認論者とされる小松一郎駐仏大使が起用され、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(通称:安保法制懇)における議論も加速しつつあるようである。政局上の問題から予断は許されないが、次期防衛大綱に集団的自衛権の行使容認が盛り込まれる可能性が高まっている。

 集団的自衛権の行使容認には、もとより大賛成である。そして、それを憲法改正を待たずに、解釈変更で実現することも、極めて適切であると思う。ただ、その大前提として、集団的自衛権の定義を適正化することが必要不可欠である。政府による、現在の、集団的自衛権の定義は、1981年5月29日の国会答弁で示された、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにも関わらず、実力をもって阻止する権利」である。これは、集団的自衛権についての国際的な共通認識からは、かけ離れたものである。

1986年に国際司法裁判所がニカラグア事件について出した判決において、集団的自衛権の行使要件として、武力攻撃があったこと、被攻撃国が来援要請をしたこと、が挙げられている。日本政府が言う「自国と密接な関係」など、どこにも出て来る余地がない。集団的自衛権は、被攻撃国の来援要請に対して応諾しさえすれば、いかなる国でも行使できるのである。安保法制懇の柳井俊二座長は、集団的自衛権の行使について、「国内法でいうところの、他者のためにする正当防衛と類似の概念である」と述べたことがあるが、その通りである。そして、そもそも、法の問題に「自国と密接か否か」という政治判断に係る問題を持ち込むのが理に適っていない。

「自国と密接な関係」を定義に入れてしまうと、上述のような理論上の問題だけでなく、実際上の問題も生じる。例えば、台湾有事に際しては、我が国は当然関与することになるが、台湾を「自国と密接な関係にある外国」と言うのは難しい。そうなると、政府の解釈をそのままにしたのでは、台湾空軍の戦闘機を空自の戦闘機が支援する根拠がないことに変わりはない。やはり、「自国と密接な関係」の部分は何としても削除すべきである。(つづく)
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