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2013-09-17 11:05

(連載)国際法上、人道的介入の武力行使は可能か(4)

角田 勝彦  団体役員
 2005年3月、アナン国連事務総長が行った創立60年になる国連を効果的に機能させるための勧告案は、より野心的・総合的なものであった。紆余曲折の結果、第60回国連総会の特別首脳会合が9月16日採択した「成果文書」は、人道的な介入に道を開く「(大量殺戮、戦争犯罪、民族浄化および人道に対する犯罪から人々を)保護する責任」の理念を明示した。この概念は、イラク戦争に際し米英等によりさっそく主張された。

 2006年安保理決議1674は「保護する責任原則」を再確認した。 安保理は、これを「形成途上の原則」としながらも、「ソマリアに関する安保理決議において明らかであり、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のリベリア、シエラレオネでの活動、NATOのコソボでの活動でも援用されている」と明示している。このように、「人道的介入(保護する責任)」は国際社会が主権国家に武力介入する根拠として認められているといえよう。なお国連安保理は、これにこだわらず、例えば「平和に対する脅威」が存在すると判断して、強制措置を決定できる。

 問題は、国連安保理の同意無く(また集団的自衛権の発動でもなく)、武力介入が行えるかである。国連安保理が(多くの場合拒否権発動により)機能不全に陥ったとき、関連諸国が合同して武力行使を行った例は、朝鮮戦争の際の「平和のための結集」決議を含めて、かなりある。何らかの形で安保理決議に根拠をもつ多国籍軍(例えば湾岸戦争時)を別にしても、一般に「国連のマンデートと管理の枠外で軍事的に行動する国家の集団」と定義される「有志連合」が脚光を浴びている。有名なのは、1999年のコソボ紛争におけるNATO「同盟の力」作戦、2001年9月の米同時多発テロ後の対テロ作戦( とくにアフガニスタン空爆とイラクへの武力行使に踏み切った米英主導の「有志連合」)である。ロシアはNATO軍が1999年国連安保理の承認なしにセルビアを空爆したことを 非難していたが、地域の秩序は回復し、2008年2月コソボは独立を宣言した。

 国連安保理は国際社会から全権委任されたわけではない。拒否権を持つ常任理事国は、自国が「平和に対する脅威」となっても、世界からの指弾を免れることを保障されているわけではあるまい。「人道的介入(保護する責任)」は具体的事例に則して国際社会が是非を判断すべきことなのであろう。(おわり)
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