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2013-11-05 06:51

特定秘密法案が露呈した“革新弱体化”の実態

杉浦 正章  政治評論家
 特定秘密保護法案をめぐって保革が激突の様相を呈し始めた。その対立構図はまるで60年安保の時のような先鋭化の色彩を示している。しかし安保の時とは決定的な差が見られる。安保は保革それぞれに大局観と理論武装を伴った政治勢力の激突であり、革新勢力は現在より圧倒的に質量共に上回っていた。院外勢力も学生運動を軸に盛りあがった。しかし現在の革新側の中核は超弱小政党である共産、社民両党と新聞の使命を忘れた朝日新聞であり、その主張は何よりも見当違いであるうえに、大局観に欠ける。この程度の“革新”に破れるようでは自公政権もだらしのないことこの上ない。首相・安倍晋三は最終的には臨時国会で迷わず中央突破して、国の安全確保の礎を築くべきである。まず重要なポイントは何かと言えば、重箱の隅を突っつく論議ばかりが国会でもマスコミでも展開されており、事の本質を見失っていることであろう。なぜ日本版NSC法案と特定秘密保護法案が一体となって俎上に上がったかの根源を全く忘れている。危機はそこまで来ていたのにもう忘れたのかと言いたい。中国国家主席・習近平が「尖閣は核心的利益」と唱え、軍事圧力を強めれば、北朝鮮は日本の都市を名指しで核ミサイル攻撃するとどう喝する。そんな国々が近隣に存在するにもかかわらず、革新側はキャッチフレーズと“風評”で国民的運動につなげようと必死だ。

 共産党が「特定秘密保護法は国民に隠して日本を戦争が出来る国にする法案であり、絶対反対する」と主張すれば、社民党は「日米軍事一体化が進む中で、我が国を情報統制、軍事機密国家にする法案」と訴える。まるで「安保条約反対闘争の位牌」の裏からはたきをかけて、半世紀前の言葉を取り出したかのような主張を繰り返している。朝日は先に書いたように事態の“風評化”を目指して、その勢いはとどまることを知らない。ドイツ首相・メルケルへの盗聴事件が生ずれば、社説で「盗聴国家の言いなりか」と決めつけ、「日本政府が盗聴事件の最中に米国情報の保護を優先し、日本社会の知る権利を削るなら、あまりに理不尽」と見当外れの安保度外視の社説を堂々と展開している。ならば朝日新聞に問いたい。あえて「貴紙」と呼ぼう。貴紙は盗聴がロシアや、中国や、北朝鮮ならば許容するのか。言うまでもなく、日本はスパイ天国であり、「米国情報を得るためなら、日本に行け」が諜報員の常識となっている状況をどう見るかだ。そもそも、長年に渡って首相の携帯が盗聴されるようなドイツは間が抜けているのだ。アメリカですら盗聴しているのだから、ロシアや中国がそれを上回る諜報戦を試みていることは当然予想される。アメリカは「ばれた」だけなのである。事々さように、食うか食われるかの諜報戦が世界中で展開されているのが現実であり、秘密保護法もない日本は諜報戦の“主戦場”となっているのだ。この諜報戦は国家が存続する限り展開され、これに敗れたものが実戦でも敗れる、というのが“弱肉強食”の現実なのだ。

 朝日は「虚飾の事態」を創出して反対論を唱えるから、筆者はより現実的な事態を想定しよう。例えば米国から“盗聴情報”の伝達があったとしよう。「中国軍が今夜尖閣諸島を占拠する方向で動き始めた。尖閣占拠の次は沖縄を占領する」という超機密情報だ。また「北朝鮮が3日後に核ミサイルを日本の東京、名古屋、大阪、福岡に向けて発射する準備を整えた」とする情報も伝わった。この国家の命運を左右する機密情報を、朝日は「盗聴情報だからけしからん」として、「政府が信用出来ないから公開して、国民的論議の場に付せよ」と主張するのだろうか。またこの機密を漏らした公務員を、国家が存続していればの話だが、懲役1年の刑で罰せよというのか。それでも「米国の情報を優先しては、国民の知る権利を削る」などとノーテンキな社説を唱えていられるのか。社説を書くものは「天から平和は降って来ない」という国の安全保障のイロハから勉強し直した方がよい。

 とりわけ重要なポイントは、マスコミの取材、報道の自由に対する革新側の“被害妄想”とも言える主張である。情報を入手する「正当な手段」とは何かをめぐって、あの西山太吉事件まで朝日は擁護するかのようである。インタビューをして言いたい放題言わせている。朝日は西山事件の最高裁の有罪判決をどう見ているのであろうか。「司法による弾圧」とでも言うのであろうか。沖縄返還密約の一部を暴いた西山は「英雄」なのか。言うまでもなく最高裁で問われたのは「正当な手段」であったかどうかであり、秘書をたぶらかして情を通じ、その弱みにつけ込んで情報を入手した「手段」を「不当」として有罪としたのである。その暴いた密約を毎日新聞の紙面で報ずるのならまだ職業意識があるが、社会党の議員に渡して予算委員会で追及させるとはどういうことか。野党への情報提供も「英雄」であるのか。総選挙や参院選挙前の安倍や幹事長・石破茂の発言をもう一度検証してみるべきだ。原発再稼働もテレビで公言しているし、NSC、特定秘密両法案の目標でもある集団的自衛権の行使も公約に掲げている。朝日も共産、社民両党もその主張は完敗したのであり、再び蒸し返すのは見当違いだ。言うまでもなく日本は議院内閣制である。国民に付託されたからこそ自公政権がなり立っているのである。それもやろうとしていることは、国家の安全保障であり、普通の家の戸締まりである。これが信用出来ないなら、日本にいてもらわなくてもいい。歴史上安保をないがしろにして、他国の蹂躙(じゅうりん)を受けた国に「報道と言論の自由」があったか。「おみおつけで顔を洗って出直してこい」と言いたい。昔、佐藤栄作が戦後の保革対決で漏らした言葉がある。「社共と朝日の反対することを行えば、日本は繁栄する」。その通りだ。これは今も不変の定理として存在し続けている。
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