国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-12-24 11:32

国際秩序強化に主導的役割果たすために

鍋嶋 敬三  評論家
 「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を理念に掲げたわが国初の「国家安全保障戦略」(以下「安保戦略」)が12月17日閣議決定された。1957年の「国防の基本方針」に代わる基本的文書である。同時に防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画(中期防)も改訂された。国際情勢の歴史的転換にもかかわらず、56年間も「基本方針」が変わらなかったのは驚きである。国家安全保障会議(日本版NSC)を発足させ、特定秘密保護法を成立させた安倍晋三首相の安全保障政策に対する強い思い入れがある。「国防の基本方針」は安倍首相の祖父・岸信介首相が第1次内閣で策定したという因縁がある。

 保守合同からわずか1年半、政治的思惑がなお渦巻く中で日米安保体制と防衛力の漸進的な整備をセットとする「軽武装」路線が戦後日本の防衛政策の枠組みとなった。当時の岸首相にとっては最大の政治課題とした日米安保条約改定をにらんだ対米外交の一環という側面もあった。半世紀の時代の変化はすさまじい。米ソ冷戦終結(1991年)、対米テロ攻撃(2001年)、中国をはじめとする新興国の急速な台頭と米国の相対的な地位の低下などで世界の安全保障環境は一変した。アジア太平洋地域では北朝鮮のミサイル・核開発に加え、中国の力を背景にした一方的な現状変更の動きが新たな脅威として迫ってきた。

 この背景には新興国の台頭による「パワーバランスの変化」(「安保戦略」)がある。冷戦構造崩壊後の多極化世界で、国際秩序を維持する米国のリーダーシップが揺らいだためでもある。シリア問題を巡るオバマ米政権の「よろめき」は世界における米国の影響力の低下を見せつけた。「安保戦略」では日本をグローバル化した国際社会における「主要なプレーヤー」と位置付けた上で、国家安全保障上の目標として国際秩序の強化、紛争の解決に「主導的な役割」を果たすことを掲げた。抑止力を強化してわが国への脅威を防止し、日米同盟の強化によって直接的な脅威を予防することももちろん目標としている。

 「安保戦略」は外交、防衛政策を中心に「戦略的アプローチ」を示したものであり、同時に海洋、宇宙、サイバー空間などのグローバル・コモンズ(国際公共財)に関するリスク管理の指針でもある。当面、平時でも有事でもない「グレーゾーン」事態への対応、武器輸出3原則の見直しが具体的課題になる。日米同盟強化のためには日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改訂が始まる。集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の見直し、領域警備の体制整備など、日本の安全保障力を内外に示すものとして安倍内閣が処理すべき重要な政治課題が控えている。国際社会で主要なプレーヤーとして主導的な役割を果たすためには、日本の「実力」が外から目に見える形にしなければならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム