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2014-01-24 06:53

世界中で日中「大使戦争」の様相となった

杉浦 正章  政治評論家
 まるで首相・安倍晋三の靖国参拝をめぐって日中「大使戦争」の様相を呈している。外務省によると、約50か国で中国大使が新聞や講演で対日批判を展開、これに日本大使が徹底した反論をするという事態だ。中国の批判の特徴は、安倍に焦点を絞っている点であり、その狙いは、地球規模でのプロパガンダで安倍の孤立化を図る、という紛れもない心理戦である。最終的狙いは、日本に音を上げさせて「尖閣譲歩」に転じるところにあることは言うまでもない。日本は、安倍自身の外交努力では足りない。無視は萎縮に通ずる。売られたけんかは倍返しで買わなければなるまい。まず論争は、ロンドンとワシントンで始まった。ロンドンでは中国大使が安倍を人気小説「ハリー・ポッター」の闇の帝王「ヴォルデモート卿」に例えて、悪の権化のように批判。これに対して日本大使が「既に存在しない軍国主義の亡霊を持ち出し続けることをやめよ」と戒めた。ワシントンでは駐米大使が、靖国神社に参拝した安倍を「近隣国との対話の扉を閉ざした」と批判。駐米大使・佐々江賢一郎が「中国の指導者は国際世論を明らかに読み間違えている。アジアの大部分と国際社会が懸念しているのは、日本ではなく、中国だ」と反論した。中国は執拗で、駐仏大使はフィガロ紙上で靖国神社をヒトラーの墓に例え、安倍がこれに献花した姿を想像するよう訴えた。

 アフリカや中近東では、エチオピアの中国大使が安倍を「アジア最大のトラブル・メーカー」と呼び、イスラエルでは大使が靖国神社に祭られている東条英機を「アジアのヒトラー」だと述べ、これに参拝する安倍を非難した。明らかに中国の大使らは本国からのマニュアルに基づいて統制された対日非難を展開している。中国の狙いは、筆者がたびたび指摘しているように、その基本戦略を尖閣での軍事圧力に加えて、心理戦も展開、安倍を世界的にも、国内的にも孤立化させるところにある。加えて、韓国大統領・朴槿恵を安重根記念館開設で取り込み、「プロパガンダ同盟」で日本を追い込み、弱らせ、尖閣での譲歩を取り付けるところにある。しかし、この中国の地球規模のネガティブキャンペーンには限界がある。まず対外的には日本が反論を展開する限り、少なくとも相打ちか、日本優勢で終わるからだ。なぜなら佐々江が「中国と異なり、日本は戦後、戦闘で一発も弾を撃っていない」と反論したとおり、「不戦の日本」への理解度は高まっている。英国のBBC放送が行っている世界各国の好感度調査では、日本は常に1位から4位までの上位を占め続け、中国や韓国はそれぞれ9位や10位にとどまっている。

 戦後の歴史を見ても68年間、日本は戦争に参加しない唯一の大国である。中国は朝鮮戦争、中ソ国境紛争、中越戦争、チベット紛争などを繰り返し、韓国も朝鮮戦争やベトナム戦争を経験している。とりわけ韓国は朝鮮戦争では、北の女性を性奴隷として米軍将校に提供、ベトナム戦争では一般市民に対する暴行、強姦など残虐行為を繰り返したことで、悪名が高い。両国とも、自分のしたことを棚に上げて、戦後一発のタマも撃たず、一人の外国人も殺傷していない日本を批判しても、説得力は無い。新しい世代は“無実の罪”で非難されていることになり、その反動がネット右翼として台頭していることの方が、中韓にとって恐ろしいことにつながると知るべきだ。さらに加えて、日本は中韓が非難するように好戦的な国家に転換しようとはしていない。行っていること、または行おうとしていることは「防衛態勢の充実」であり、「攻撃態勢の強化」などではさらさら無い。

 集団的自衛権の行使容認は、攻撃があった場合の同盟国防御であり、これは国連憲章の要である。韓国が批判するのは、全く見当違いだ。韓国のような小国が大国のはざまでなり立って行けるのは、集団的自衛権が認められているからにほかならない。戦後の日本は国際協調を旨として生きてきたのであり、その不断の努力をないがしろにした中韓の反日プロパガンダ同盟は、平和志向の国民にとって、受け入れがたいものである。そのことを両国は知らねばならない。こうして中韓の目指す日本の国際的孤立キャンペーンは徒労に終わることが目に見えている。一方で、安倍を国内的に孤立させることにも無理がある。中韓は一部の左傾化新聞の論調だけを見ると見誤る。安倍を観察するかぎり、中韓が宣伝するようなヒトラーの再来でも、軍国主義者でもない。安倍がある日突然中韓の領土を1センチでもかすめ取ろうとするだろうか。そんな気配など全く存在しない。それは国民がよく知っており、自民党の秘密保護法強行で下がった内閣支持率は、1か月で完全に回復して、60%前後という驚くべき高さを維持している。かつて人気が沸かずに大野伴睦の人気にあやかりたくて「伴ちゃんと呼ばれたい」と述べた佐藤栄作が今生きていれば、「安倍ちゃんと呼ばれたい」と言うだろう。まさに「安倍ちゃん」人気なのであり、世界の世論はアジアのトラブルメーカーが海洋進出の膨張路線にまい進する中国国家主席・習近平であることを知るべきだ。
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