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2014-02-04 16:51

(連載2)シリア和平国際会議とシリアへの緊急人道支援

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 シリア国内で戦闘に加わっている外国人ジハーディストは1万人以上に上り、うち20%がヨーロッパ系であり、米国系も700人いるといわれている(アラブ系アルカイダに関しては、2011年3月~2013年12月までのシリアでの死亡者が9900人と12月23日付アルハイヤートで報じられている)。問題は2つある。第1点は、このままではシリアとイラクの国境地帯が国際テロリストの温床になること、第2点は、シリアでの戦闘経験者が欧米各国に帰還した時、自国でのテロを実行するリスクが高いことである。

 このことから、次のような対応が考えられる。(1)シリアの反体制派の自由シリア軍やシリア戦線がISISを駆逐する。(2)アサド政権とイラクのマーリキ政権がISISを封じ込める。(3)欧米諸国の治安関係・情報機関が対策を強化する。いずれにしても、国際社会は、シリア問題解決のための課題として、シリアでの人道問題に加え、「テロとの戦い」も視野に入れなければならなくなっている。このため、国際社会では、(1)アサド政権の存続、(2)アサド政権と反体制派との停戦、捕虜の交換、都市の封鎖解除を進める、という政策選択が話題に上っている。

 しかし、欧米諸国をはじめとする各国が「国益」をかけて外交交渉を行い、このような政策選択で平和構築を進めようとした場合、多くの犠牲者を出した反体制派勢力側に大きな不満が残るだろう。それにも増して、内戦で食糧、医療、そして暖を取ることさえままならず、緊急人道支援を必要とする930万人にとどこうとする一般市民の救援が遅れる可能性がある。また、1月14日のシリア支援会議で国連は、人道支援のために今年1年間で65億ドルが必要だと訴えた。これに対し、同会議で各国が表明した支援金の合計拠出額は24億ドルである。

 国家レベルでできることに比し、市民レベルでできることは微々たることかもしれない。しかし、それは、私たち1人1人がシリア難民、国際避難民のための支援行動をしない理由にはならない。今は「国益」のためではなく、緊急支援を必要としている人々を第一に考え、行動すべき時だろう。本文をお読みくださった方は、できるだけ多くの方にシリアの人道危機について話していただければ幸です。(おわり)
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