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2014-02-06 06:59

「政権打倒は朝日の社是」と、安倍宣戦布告

杉浦 正章  政治評論家
 温厚な安倍ちゃんがついに堪忍袋の緒が切れるのくだりであった。首相・安倍晋三は2月5日の国会で朝日新聞を「安倍政権打倒は朝日の社是であると聞いた。そう言う新聞だと思って読んでいる」と真っ向から批判したのだ。これほどきっぱりと特定の新聞を名指しで首相が切りつけた例を知らない。新聞とのけんかは、佐藤栄作が退陣表明の記者会見で「 新聞記者は出て行け。偏向している新聞は大嫌いだ。私は直接国民に語りかけたいんだ」 と記者たちを追い出した例がある。朝日などに対する不満が積もり積もったものとみられたが、名指しはせず、しかも最後っ屁の色合いだった。安倍は長期政権がささやかれており、その政治信条から見て朝日とは折り合うはずもなく、まさに「安倍・朝(あべあさ)戦争」が幕を開けた感じだ。参院予算委では自民党の脇雅史が特定秘密法案をめぐるマスコミの報道を取り上げた。これに対して安倍は「今までの決めつけの議論がどれくらい正しかったか、はっきり検証すべきだ。政府がやるべきことではないが、党がやれば有意義だ」と発言した。次いで安倍は、朝日などが秘密保護法案審議の過程で“風評”まがいの紙面作りをしたことについて、「飛んでいるオスプレイを撮り、友人に送ったら懲役5年、という議論もあった。実際に誰かやって確かめてみたらいい。まったくそんなことは起きない。言った人は責任を持ってもらいたい」と憤まんをぶちまけた。そして「安倍政権打倒は朝日の社是であると聞いた。そう言う新聞と思って読んでいる」と発言したのだ。

 確かに、秘密保護法をめぐる朝日の報道ぶりは、客観性とはほど遠いものがあった。連日の如くヒステリックに反対の社説を掲載、その数は約半年で30本近くになった。「天声人語」もまるで反秘密保護法の牙城のようであった。秋の臨時国会でその論調は最高潮に達した。10月26日の朝刊で「天声人語」は、なんと秘密保護法案について「米国からもらった情報を守るために自国民を罪に問う法である。民主主義を揺さぶりかねない法でもある」と断定したのだ。そこにはかつての社会党とも一脈通ずる根深い反米思想がありありと存在している。そして「出来てしまったあとで破滅的な結末を招いた、戦前の幾つかの法を忘れたくはない。『はじめにおわりがある』。抵抗するなら最初に抵抗せよ。朝日新聞の大先輩にして反骨のジャーナリスト、むのたけじ氏の言葉が点滅する」と続けた。明らかに同日から朝日は大衆扇動の“風評”路線を選択したのだ。これを裏付けるように「素粒子」欄では「『お前は秘密を漏らした。逮捕する』。『何の秘密を』『それは秘密だ。私は知らぬ』。秘密保護法のオーウェル的世界」とやっている。マインドコントロールのジョージ・オーウェルにこじつけて、全体主義への危険があるかのような印象を読者に与えている。また社会面では居酒屋の会話で逮捕される会社員の“物語り”をでっち上げた。この傾向は文学の薫り高い欄であるはずの「朝日歌壇」にまで及び、陳腐な秘密保護法批判の短歌ばかりを掲載するという執拗さだ。

 筆者が1月29日の「俳談」で 「芸術の世界にまでイデオロギーを持ち込もうとする執拗な姿勢にはあきれるばかりか、生理的嫌悪感すら感ずる」と書いたのが利いたのか、3日の歌壇では延々と続いてきた「秘密保護法短歌」が影をひそめた。歌壇は選者が常習犯的に時の論調を反映させる。昨年夏には「原発反対」一色の歌壇であったことがある。こうした報道に対して安倍は自民党役員会で、特定秘密保護法を含む政権の取り組みを説明する広報資料を作るよう指示している。自民党は「特定秘密保護法に関する誤った新聞報道への反論」と題する反論文書を作り、党所属の全国会議員に配布した。取り上げた記事は、朝日12本、東京7本、毎日4本に及んでいる。安倍は恐らく朝日を普段は隅々まで“愛読”しているに違いない。したがって、その紙面を挙げての大衆扇動と反安倍路線に対して強い不満を抱くに至ったのであろう。安倍にしてみれば読めば読むほど神経を逆なでされることになる。事実朝日の紙面に呼応するように、国会や首相官邸を取り巻くデモは拡大していった。そして我慢の糸がぷつんと切れたのが、予算委の答弁であった。歴代首相にはない直接的マスコミ批判であるが、首相にも言論の自由はある。その責任の範囲において批判すべきと思ったものは批判すればよい。その批判の妥当性は国民が判断して、選挙で審判を下す。それが民主主義だ。

 この“宣戦布告”に対して朝日がどう出るかだが、朝刊では何の反論も出していない。読売が報道するにとどまっている。しかし、佐藤を怒らせた朝日の社会党べったりの報道ぶりは、伝統として引き継がれ、もうほとんど病膏肓(こうもう)に達している段階であり、確かに安倍が言うように「安倍政権打倒が社是」なのであろう。今後集団的自衛権の憲法解釈変更や、夏に予定される原発再稼働をめぐって「安倍・朝戦争」は一層の高まりを見せるに違いない。しかし、脱原発は都知事選で「細川・小泉」路線を煽りにあおって失敗し、これに先立つ衆参選挙でも脱原発論調が完敗。今後も結局勝てないことが分かっていない不毛の論調を繰り返すだけだろう。集団的自衛権では中国、北朝鮮の軍事的脅威どこ吹く風の「昔日の安保論争」を繰り返しても説得力がない。結局安倍が勝つに違いない。
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