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2014-07-28 10:03

(連載2)安倍総理の中南米歴訪を評価する

角田 勝彦  団体役員、元大使
 政治面では 中南米33カ国は民主主義と国際法重視など基本的価値を共有する国際場裡の一大勢力である。アルゼンチン、ブラジル、メキシコはG20のメンバーであるが、今回の歴訪では国連関係が重視されている。トリニダード・トバゴでは、カリブ海14か国が加盟するカリブ共同体(カリコム)諸国との初の首脳会合を開き、来年10月に行われる国連安全保障理事会の非常任理事国選挙での日本への投票を呼びかける。ブラジルでは、国連創設70周年となる2015年に、国連安全保障理事会の常任理事国を拡大する安保理改革の提案に向け連携する方針を共同表明しよう。ドイツ、インドを加えた「4カ国グループ」(G4)の主導となろう。またこの歴訪は、「米国の裏庭」と見られて来た中南米で勢力拡大を図っている中国へ対抗する意味を、結果としてにせよ、持つことになろう。

 中国はBRICsの一員であるブラジルを中心に中南米に急接近している。習近平国家主席は昨年5~6月トリニダード・トバゴ、コスタリカ、メキシコ3カ国を訪問していたが、本年7月にはBRICs首脳会議に合わせブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバ4カ国歴訪を行った。主目的はBRICsの「新開発銀行」を含め経済関係強化とされる。ブラジルではラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC。30カ国超加盟)首脳会議に参加し「10年以内に中南米との貿易総額を今の2倍の5000億ドルまで増やす」と述べた。南米初の大陸横断鉄道の建設などインフラ投資やエネルギー分野での協力拡大も打ち出した。

 ベネズエラでの反米チャベス路線の賛美やキューバ訪問を見ても米国牽制の意図は明らかである。パナマ運河への対抗意識を持つニカラグアとの関係でも中国企業の香港子会社がニカラグアを横断する新運河計画を推進している。

 なお「地球俯瞰外交」を掲げる安倍総理の訪問国数が、中南米の後9月に予定するバングラデシュ、スリランカ両国訪問で、歴代首相でトップとなる。2012年12月の第2次政権発足以降49カ国となり、現在1位の小泉純一郎元総理(48カ国)を抜く。しかも小泉氏が5年5カ月かけて48カ国を訪問したのに対し、安倍総理は就任から約1年9カ月で上回ることになる。1カ月あたりの外遊ペースは1.15回(21日現在)で、これも歴代トップである。過労にならないかとさえ危惧される。この勤勉さは評価すべきだろう。 (おわり)
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