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2014-08-05 10:49

(連載1)問題は、抑止力の不在と意志の欠如

袴田 茂樹  日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
 民間機がウクライナ東部のドネツクで撃墜されるという悲惨な事件が生じた。ウクライナ東部の今日の紛争や混乱に関して、私は、欧米や日本にも、ある意味で重大な責任があると考えている。以下、それを指摘したい。

 撃墜事件に関して今、ウクライナや米政府とロシアは、お互いに相手を非難しているが、根本的な原因はもちろんロシア側にある。根本的な原因というのは、次の2つを指す。第一は、力によるクリミア併合という、国際秩序、国際法を根底から否定する行動をロシアがとったこと。プーチン大統領自身も4月17日に、ロシアが軍事介入したことを認めた。第二に、その結果、ウクライナの東部(含南部)で親ロシア勢力の非合法な分離主義活動が活発化し、それをロシアが政治的、人的、軍事的にテコ入れしてきたこと。

 ちなみに、「ドネツク人民共和国」などの指導部の多く(A・ボロダイ、I・ストレルコフなど)は、ロシア系ウクライナ人ではなく、ロシアから送り込まれたロシア国籍を有する特務員である。またロシアから多くの「義勇兵」がウクライナに入っているが、モスクワ市内やインターネット上でも公然と義勇兵が募集されている。露骨な主権侵害だ。この結果、クリミアの東部が戦場となり、旅客機だけでなく、軍用機の撃墜事件も度々起きている。親露派に一定の影響力を有するプーチンは、幾度も紛争解決に努力すると約束しながら、それは言葉だけに終わっている。

 この状況下で、ウクライナ東部の事件に関して、欧米や日本にも責任があるという意味を説明したい。まず、クリミア併合に関して、欧米諸国・日本は言葉では批判し、またシンボリックな経済制裁も行ったが、事実上見て見ぬ振りをして黙認した。今日に至るまで、欧米とロシアの交渉では「クリミアのウクライナへの返還」はテーマとなっていない。(つづく)
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