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2014-09-11 06:54

朝日は「原発でも曲解」を続けるな

杉浦 正章  政治評論家
 朝日新聞論説委員・恵村順一郎はいまや「報道ステーションの星」の論客に成長した。その影響力たるや、日本のリベラル論調をリードすると言っても過言ではない。背景に朝日の論陣のバックアップもあるのだろう。翌日朝日の社説を読むと惠村発言はその社説の丸写しの論調であるケースが多い。しかし肝心の朝日が慰安婦強制連行大誤報で解約続出とあっては、内心穏やかではあるまい。昨夜(9月10日)も川内原発再稼働で「反対」の論陣を張っていたが、原発の危険性は要するに確率の問題であることに気が付かない。朝日が誤報で廃刊する確率と原発が大事故を起こす確率はどっちが高いかと言えば、廃刊の方が高いくらいだ。もっともその確率は限りなくゼロに近いのだが、朝日は再稼働阻止に向けて最後の悪あがきを続けたがる。大論説委員のテレビにおける伝搬力に比べれば、筆者の主張など蟷螂(とうろう)の斧の部類だが、少なくとも小生の読者には間違っていることを知らせておく必要がある。まず惠村は原子力規制委員会の再稼働決定の合格証について「事前の許可を得たということは、基準が法律上の基準に達したということに過ぎない」と述べたが、論説委員とも思えないお言葉だ。

 朝日は日本が法治国家であることを認めていないのだろうか。行政全ては法手続に沿って行われるのであり、法律上の基準を満たすことが何より重要なのだ。法律上の基準をクリアすれば、全てが可能となるのは当然だ。頭のいい人だから、きっと舌が滑ったのだろう。惠村は「火山のリスクがある。川内原発は火砕流が到達したところに出来ている」と、こんどは視聴者への“脅し”にかかった。しかし国内で巨大噴火が起こるのは1万年に1度の確率である。確かに2万8千年前の姶良(あいら)大噴火の火砕流が、川内原発敷地内に及んでいた痕跡はあった。しかし日本は火山列島であり、それを言ったら住む場所もありませんということになる。1万年に1度どこかで大噴火があるにしても姶良とは限らない。それは1年後かも知れないし、1万年後かも知れない。朝日のインテリはすぐに物事を「怖がる」癖があるが、普通の人類はもっと度胸がある。人類の勇敢さはリスクにチャレンジし続けることなのであり、それにより繁栄を遂げてきたのだ。米国テューレーン大学の資料によると、任意の1年で人間が死亡する確率は地震13万分の1、洪水3万分の1だ。これに対して自動車の衝突事故で死亡する確率は90分の1ではるかに高い。にもかかわらず交通手段としての自動車は世界を席巻し、いまでは衝突しない自動車の開発実用化が進んでいる。

 原発は出来てからまだ63年、日本の原発が稼働して51年。たったの半世紀にしか過ぎない。この間、職員の誤操作による核爆発を起こしたチェルノブイリを除けば、原発事故での直接の死者はゼロである。水力発電はダムの決壊で大量の死傷者を出し、火力発電もしょっちゅう爆発事故等で死傷者を出している。それより深刻なのは原発を稼働しないが故に生ずるCO2垂れ流しによる気候大変動だ。異常気候による広島土石流災害の例を直視すべきだ。先に書いたが国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「20世紀後半に観測された地球温暖化の主因は95%が人間だ」と断定している。そして「二酸化炭素排出量の削減が喫緊の課題」と指摘しているのだ。朝日と緊密な関係にあるニューヨークタイムズは社説で「原子力に危険が伴うのは事実だ。しかし過去に起こった原子力事故は石炭、ガス、石油といった化石燃料が地球に及ぼすダメージには遠く及ばない」と分析。「再生可能エネルギーが化石燃料に取って代わる日ははるかに先であり、それまでは原子力が大気中の温室ガス増加対策で貴重な発電手段であり続ける」と結論づけている。朝日はこれをどうして報じないのだろうか。

 朝日の論調の欠陥は、このキーポイントをあえて無視していることだ。CO2を排出しない主要電源は原発と水力しかないことが分かっているのに、一切触れない。原発反対の論拠が崩れるからだ。この報道姿勢は慰安婦強制連行誤報を36年間続けた体質と酷似している。忠告するが、「原発曲解」も早期に改めた方がよい。それに20年30年のスパンで物事を見れば、科学技術は大きな進歩を成し遂げ、ぶつからない自動車と同様に原発の安全性はさらに増強される。安全神話が神話でなくなるまで科学技術は進歩し続けるのだ。惠村は「電力が不足していない中で、再稼働を急ぐことは、やはり3.11の前に日本を戻す事になる」と強調したが、これも事実誤認がある。電力は不足しているのだ。高給をもらっている朝日の記者貴族は気づかないかも知れないが、安い電力が不足しているのだ。日本は世界一高い電力しか売っていないのだ。90%が火力に頼っている結果、電気料金は家庭で2割、企業で3割も上がり、石油価格は高騰、国富は年間3.6兆円も海外に流出している。さらに電気料金は上がる方向だ。「3.11の前」とは、原子力安全神話が横行した時期のことを言わんとしているのだろうが、もう少し実態を正確に見る目を養った方がよい。原子力規制委は世界一厳しい稼働基準を作って、それを適用しようとしているのだ。だから再稼働が遅れているのだ。3.11以前とは打って変わった原発が稼働するのだ。秘密保護法、集団的自衛権、そして原発と朝日の“曲解”“風評”論調は限りなく続くが、どうせ改めるなら36年間も誤報の垂れ流しをやった後でない方がよい。
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