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2014-10-02 15:04

(連載1)ウクライナを巡る森喜朗元首相のモスクワ発言に強い懸念

袴田 茂樹  日本国際フォーラム評議員
 この投稿では、モスクワを訪問した森喜朗元首相のウクライナ問題に関する発言(9月9日のEU批判のスピーチ)について、私の強い懸念を述べたい。安倍首相のプーチン宛て親書を携えて訪露した森喜朗元首相がモスクワで行ったスピーチには、にわかには信じ難い内容が含まれている。9月9日、森氏はナルイシキン下院議長と共に出席した日露フォーラムでスピーチをした。

 そこには、次のようなウクライナ問題に関する森氏の私見とEUの対露政策を批判する言葉があった。翌日森氏はプーチン大統領と会見しているが、同様の見解を伝えた可能性がある。ちなみに、欧米諸国は対露制裁の一環として、ナルイシキンに対するビザ発給を停止したが、日本は彼を受け入れている。

 森氏は、「ウクライナの問題には長い貴国の歴史、そしてそれぞれの時代の複雑な関係があり、私たちはそれに関わる資格はない。ロシアの国家や国民は、かつての領土であるだけに、住民が多く住むこの地域がNATOに加わるというのでは、ロシアが不服を伝えるのは、私は十分理解ができる。EUが2年前、ノーベル平和賞を受賞して驚いた。EUがなぜ平和賞を取るのだろうと思って調べた。60年間ヨーロッパに戦争がなかったからというのが、評価だったということだ。その(EUの)皆さんが本当にウクライナのことを反ロシア戦線に巻き込んで、ロシアを叩くということを本当に考えているのか。それではノーベル賞は泣くのでは、という思いです。ヨーロッパもロシアも自由とそして民主主義、そしてお互いに自由の繁栄を願う国だから、できれば理想を言えば新しいヨーロッパの体制が出来上がってもいいのではないだろうか」と述べている。

 安倍首相は、尖閣問題や日中の緊張した関係を意識して、グローバルな視点からロシアによるクリミア併合を「力による現状変更」として厳しく批判した。中国の近隣諸国に対する主権侵害のエスカレートを考えると、また北方領土問題を抱える日本としては、ロシアによる主権侵害はもちろん黙視できない。もし日本がそれを黙視するとしたならば、それが国際的に、特に中国に対して、如何なるシグナルとなるか、説明は要しないだろう。(つづく)
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