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2014-12-05 06:34

言論合戦を採点すれば見えてくる

杉浦 正章  政治評論家
 「先生の反った身体(からだ)が前に折れ」は12月4日の朝日川柳。街頭演説の先生を皮肉って巧妙。まさに論戦たけなわだが、政治家は言葉が命。何を言うかで存在感が決まるが、点数を付けると、キーポイントになる発言で民主党首脳らは負けの連発だ。まず首相・安倍晋三が繰り返す「アベノミクスはこの道しかない。流れを止めるか止めないかの選挙」というキャッチフレーズは訴求力がある。民主党の前原誠司が「アベノミクスはこの道しかないのではなく、この道は危ない」と食いついた。確かに危うい側面があるが、雇用が改善、賃金が上がった。実質賃金は下がったが、民主党政権で雇用が改善して賃金が上がったなどということは金輪際なかった。民主党の「財源なきばらまきの道」の方が「危なかった」のだ。したがって7対3で安倍の勝ち。選挙の潮流は自民300議席の「圧勝」へ向かっているが、野党幹部にはもう跳ね返す気力も失せたかのように見える。

 民主党の岡田克也は「我々は政権交代の力はまだない。国会で一定の数を得て巨大与党に立ち向かえる数を与えて欲しい」となにやらしおらしい。当初は野党の選挙協力の中心で張り切っていたが、まるでバナナのたたき売りのようにハードルを下げた。点数を付ければ45点だ。生活の党の小沢一郎も「政権担当への受け皿を作れば、有権者は野党の統一体を選んだが、出来なかったので当然の結果」と敗北を認めた。しかし、有権者は、小沢のいうように新党を作ったら、また内部分裂で民主党政権の体たらくの繰り返しと見るだろう。新党が出来ても有権者は「ダメよ~ダメダメ」であっただろう。判断を間違っており、16点。民主党代表・海江田万里は「分厚い中間層が再生され、中間層が健全な消費を行っていくことが、経済の成長の大きな要になる」と訴えるが、道筋がない。安倍から「手品のような方法があるのか」と切り返された。7対3で海江田の負け。

 国内総生産(GDP)で切り返そうと枝野が「民主党政権時代はGDPは5%。安倍内閣は1.7%」と主張したが、これは公明党代表・山口那津男が「2008年のリーマンショックのどん底から這い上がるために我々の自公政権が経済対策を打った。その効果が民主党政権時代に現れただけだ」と切り返して、あえない最期。確かに民主党政権時代には経済成長の言葉は発せられず、デフレ脱却などという発想そのものがなかった。農家の所得保障、高速代金無料化など、財源なしのばらまきばかりが目立った。7対3で山口の勝ち。めげじとばかりに枝野は「解散に大義がない」と主張したが、本人は9月の段階で「私が安倍氏なら、この秋に解散をやると思っている。下手をすると臨時国会冒頭かもしれない」と発言している。それがいざ解散となると「大義がない」では通用しまい。自民党副総裁・高村正彦から「立場立場、その時その時で言葉を使い分ける政治家はいらない」と止めを刺されては、ぐうの音も出ない。またまた9対1で枝野の負け。解散の大義を言うなら、元衆院副議長でノーバッジの渡部恒三のように言わなければ駄目。渡部は「吉田のバカヤロウ解散でも理由はあったが、今度の解散みたいに理由のない解散は初めてだ」が一番的を射ている。渡部に90点。

 考えてみればもともと294議席あったのに、それを維持しただけで「圧勝」と言うのは、おかしな話だが、これが「政治マジック」の極みだから仕方がない。公示日にあたって朝日の政治部長が自民党の小泉進次郎の言葉「どっちを選びますか、という戦いは今回はなじまない雰囲気がある。白か黒かじゃなくて、謙虚に丁寧に国民との対話をする選挙だと思う」に「もっとも得心がいった」と書いていたが、果たしてそうだろうか。選挙の本質は食うか食われるかであり、アベノミクスの是非は重要ポイントだ。小泉は解散のバンザイにも同調せず「今回の選挙戦は、寒い時に温泉に入ってじわっと中から体が温まってくるように訴えを続けていかないと、なぜ今解散なのかと思っている方々の心に届かない。テンションが高く、あおるような演説ばかりをしていては響かない」とも述べているが、響いているから300議席が見えている。なぜか小泉は最近斜に構えて、格好づけをするようになってきた気がする。選挙というけんかの仕方を知らない。今回の選挙では得意のセンスのある「洒落た言葉」は出ないままだ。原発反対の親父に感化されては、将来がないぞ。40点。
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