国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-01-31 16:27

連載投稿(1)袋小路の米大統領

内田忠男  名古屋外国語大学教授
 1月10日のイラク新政策発表、23日の一般教書と、年頭から重要演説の相次いだジョージ・W・ブッシュ米大統領の表情が冴えない。本人の表情だけでなく、支持率は下降の一途だし、12年ぶりに連邦議会の多数を握った民主党はもとより、与党共和党の内部からさえ声高な批判が聞かれる。いずれも泥沼化したイラク情勢の閉塞感がもたらしたものだ。

 イラク新政策では、米軍の増派だけに頼って外交を無視した強硬な姿勢が大方の拒絶にあい、一般教書では「新味なく、行き詰まりが鮮明」と厳しい批判を浴びた。確かに二つの演説だけに限れば、こうした批判は当たっているのだろう。けれども、内戦状況に打開の糸口さえ見えないイラクの現状からすれば、止むを得ない選択だったのではないか、という気もする。

 昨年秋の中間選挙終了後、超党派のイラク研究グループ(ISG)がまとめた勧告では、イラクの両隣、イラン、シリアとの直接対話を開始すべきだと提言して注目されたが、現実を考えるとどうだろう。イランのアフマディネジャド大統領の強硬姿勢に国内からも批判が強まっているのは事実としても、1970年代終わりのイスラム革命以来、不倶戴天の敵としてきたイランに、オメオメと仲介を頼むのは超大国としてのメンツが許さない。シリアにしても、イランの意を受けてレバノン南部を事実上制圧するヒズボラを支援している国だ。アルカーイダなどの浸透を防ぐ意味で、イラク国境の監視を強めるよう要請するくらいが精一杯で、イラク情勢打開への全般的助力を求める環境にはない。これまで陰に陽に協力してきたサウディアラビアやエジプトなど、親米穏健派諸国への配慮もあろう。

 端折って言ってしまえば、誤った大義の下、イラク戦争に乗り出してしまったこと自体が最大の間違いだったのであり、それを言えば、開戦の5か月余りも前に、大統領に軍事力行使の権限を無条件で付与する決議案を可決した議会にも責任はある。同案に賛成した民主党議員は、下院で81人、上院では実に29人に上る。一般市民にしても、開戦当初や、サダム・フセインを拘束した直後などは、この戦争に圧倒的な支持を送っていた。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム