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2015-06-29 08:05

(連載2)安保関連法案の国会審議とアベノミクス

角田 勝彦  団体役員、元大使
 安倍首相は、4月29日の米議会演説で今夏までの安保関連法案の成立を宣言したが、衆院特別委員会の審議でも5月28日民主党の辻元清美氏に「質問しろよ」とやじを飛ばすなど国会軽視と非難される言動があった。6月26日の延長国会の同委員会では、国会会期の大幅延長について「過去最大幅の延長をし、十分な審議時間をとった。国民の理解を深めていきたい」「どこかの時点で議論が尽くされたと判断されれば、決めるときは決める」と述べたが、これは野党への宣戦布告とみられる。当然衆議院での強行採決と憲法59条の「参議院の60日ルール」も視野に入れての行動だろう。

 野党は与党による一方的な会期決定に反発し衆参両院の審議が一時ストップしたが、菅義偉官房長官は「審議を十分にすべきだという主張があり、戦後最大幅で延長した。審議拒否ではなく建設的な姿勢で審議に臨んでほしい」と釈明した。26日には審議が再開している。なるべく強行採決を避けたい自民党は、維新の党との調整を図っているが難航している。時間切れ廃案を狙う野党との攻防が遅くも7月中旬には激しくなろう。そのとき公明党がどう動くかが安保関連法案の成否を左右しよう。自民党のみでは衆議院の3分の2に達しないからである。

 さて世論調査では、国民は安保関連法案より経済に関心を持っているようである。そしてアベノミクスは一見好調である。安倍首相は、デフレ脱却のためには経済活動の活性化による成長の促進が唯一の道であるとして、大胆な金融、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を3本の矢として導入した。まず2013年4月に、日銀は「2年程度で2%」という物価目標を掲げ量的・質的金融緩和を行った。原油安にも助けられ円安、株高が進んだ。デフレ脱却には至らないが、経済活性化の兆しが見えている。規制改革と、予算を伴う政策、組織改革などで構成される成長戦略も開始された。GDPの二倍に達する公債残高の減少(財政再建)も悲願である。

 成果が見えてきた。例えば6月下旬には国の2014年度の一般会計税収が、今年1月時点の見込み(補正予算編成時に見込んだ約51兆7千億円)より2兆円以上伸び、53兆9600億円となることが分かった。企業業績の回復で法人税収が想定より増え、賃上げや株式配当の増加で所得税収も伸びたためである。個人のレベルでも昨年4月消費税の8%への引き上げの悪影響は、2015年5月の消費支出が4.8%増と1年2カ月ぶりに増加したことが示すように、消えてきたようである。雇用関係では5月の完全失業率は前月と同じ3・3%だったが、有効求人倍率は23年2カ月ぶりの高水準の1・19倍に上昇した。ただしこのような指標は、ちまたで実感されるには至っていない。安保関連法案の国会審議にどの程度の影響を与えるかは判らない。自民党には奢りとたるみも見られるようである。マスコミの反応も、独走への批判が増えている。暑い夏になろう。(おわり)
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