国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-09-11 12:44

(連載1)安保激突とアベノミクス「第2ステージ」 

角田 勝彦  団体役員、元大使
 9月8日の総裁選で安倍晋三首相は無投票で再選された。野田聖子氏が出馬すれば参院での安保関連法案審議に影響する可能性があったが、これで与党は今国会中の安保関連法案成立に猛進するだろう。野党の反対から見て強行採決になろう。60日ルール適用も現実味を帯びてきた。多くの国民の反対から内閣支持率の低下は避けられまい。自民党の谷垣幹事長は安倍首相に、これから「池田勇人首相の役割を果たしてほしい」と進言した。保革が激突した60年安保の岸政権を引き継いで「寛容と忍耐」を打ち出し「所得倍増」を掲げ経済成長を追求して成功した池田首相の政策運営を学ぶよう勧めた訳である。安倍首相は、総裁選へ向けた政策所見で「アベノミクス」の「第2ステージ」に取り組むとし、経済最優先の政権運営を続けていくと強調した。「来年の参院選までひたすら経済政策をやる」と約束した。

 安倍内閣は、安保関連法案の成立を既成事実化して国民に経済的成果の飴を与え支持率向上を目論んでいるわけだが、60年安保の際とは違いが大きい。まず目に見える違いは、岸首相は退陣したが安倍首相は長期政権を狙っていることである。ニュー安倍でもない。来年の参院選で勝利して憲法改正を目論んでいるとすら見られている。また60年の安保新条約の場合と違い、安保関連法案は違憲であるとの批判は、成立後もなくならない。違憲訴訟も行われよう。さらにもっと大きい問題は、「所得倍増」は論外としても期待するような経済成長が実現できるかである。アベノミクス「第2ステージ」の先行きは明るくない。激突と強行採決のあとの支持率の回復は容易ではあるまい。安保関連法案採決前の「寛容と忍耐」こそ望まれる。

 安倍晋三首相は9月10日、首相官邸で公明党の山口那津男代表と会談し、安保関連法案の来週中の成立を目指す方針を確認した。これまで60日ルールの適用に強く反対していた山口氏も首相との会談後記者団に衆院再可決の可能性を否定しなかった。野党6党も11日党首会談を開き内閣不信任決議案や首相問責決議案の提出を視野に安保関連法案への対応を協議する予定である。激突必至である。この間、8日総裁選再選で今後3年の任期を確認された安倍首相の周辺からは、総裁選の政策ビラに「2020年。その先へ」と書かれたように東京オリンピックまで視野に入れた長期政権をめざす声も上がっている。捕らぬ狸の皮算用だろう。

 10月内閣改造を控え党内基盤は揺るぎなく、外交面でも安保関連法案成立による対米関係強化、10月末にも実現が予定される日中韓三国首脳会談実現、2016年5月の伊勢志摩サミットなど好材料が続く。9月下旬、国連総会出席のために訪れる米ニューヨークで、ロシアのプーチン大統領と会談する計画もある。9月10日の川内原発1号機営業運転移行で原発再稼働も実現した。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム