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2007-02-26 11:49

核を巡る冷戦からエネルギーを巡る冷戦へ

小柴啓祐  大学院生
 現在、NATO(北大西洋条約機構)が中央アジア諸国に対して安全保障のみならずエネルギーの面でも保障を提供する構想が進展している。この構想は2006年11月のリガにおけるNATOサミットにおいて発表された共同宣言を敷衍したものである。リガにおけるNATO共同宣言の最後段では、同盟の安全保障に重大な影響を与える要因としてエネルギー問題を位置づけ、エネルギーに対するリスクを算定し、エネルギー安全保障を進展させる為の国際協調を支持すると宣言されている。

 NATOは、2004年にバルト三国ならびにスロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアを加盟国とすることにより、ロシア包囲網を強化している。今回のエネルギー保障構想の進展は、ロシア包囲網をより一層強化するものである。テロ直後の2002年には、NATOとロシアの間に「NATO・ロシア理事会」が創設され、ロシアがNATOの準加盟国として扱われることになり、冷戦期のWPO(ワルシャワ条約機構)とNATOの対立関係からは想像できない大きな変化であるとされた。しかしながら、それに対する揺戻しが現在生じてきている。

 揺り戻しとは冷戦の再来に他ならない。核を巡る冷戦からエネルギーを巡る冷戦へと変化しつつある。最近のミュンヘン安全保障会議において、米国によるポーランド、チェコへのミサイル防衛システム配備に対してロシアが牽制したことは、この文脈と無縁ではない。こうした世界情勢の緊迫化に反比例するように、我が国はロシアへのウラン濃縮の委託を検討している。これは、ロシアのエネルギー資源を確保するに当たってロシアの好意を得たいとの目論見によると思われるが、サハリン2の事例等におけるロシアの対応をみても、このような日本の目論見が簡単に成功するとは思えない。緊迫する世界情勢の中で、新冷戦への戦略的対応をどうするか、そこから腹をくくった対応こそが、日本に求められていることではないであろうか。
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