国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-11-25 10:19

(連載2)「日本大好き」ウルグアイ大統領の来日

角田 勝彦  団体役員、元大使
 バスケス大統領およびニン・ノボア外相ご夫妻に加え、ダニロ・アストリ経済財務大臣など20数名の経済人が同行してビジネス・セミナーを開催したことが示すように、一行の今回訪日の主な目的は、経済関係の強化である。貿易の増大とウルグアイへの日本企業の投資拡大である。とくにバスケス大統領により首脳会談において、ウルグアイ産生鮮牛肉の日本輸入の早期解禁への期待が表明されたことが注目される。この裏にはウルグアイと中国の経済関係の急激な拡大がある。2014年のウルグアイの輸出は136.7億ドルで、肉類,穀物,乳製品,木材類が中心である。輸出先は中国、ブラジル、アルゼンチンと、中国がトップになっている(2015年1~8月の期間中、中国への輸出は全体の19.1%を占め、第一の輸出先国となった)。

 ウルグアイは世界第7位の牛肉輸出国であるが、そのうち約4割が中国向けである。さらに中国は、乳製品の輸入に重点を置いた通商協定締結の意思をウルグアイに伝えている。この拡大に鑑み、ウルグアイ外務省は、アジア担当職員の増員、在中国ウルグアイ公館の増設を予定している。また現地主要紙によれば、バスケス大統領は2016年第2四半期中に中国及びインドを歴訪する予定である。バスケス大統領が、このような状態のなかで、アジアにおける最初の訪問先に日本を選んだのは、今後の対中南米外交を考えても、おろそかに出来ない対応である。

 とくに前回2009年訪日時の鳩山首相との会談でもバスケス大統領が表明したウルグアイ産生鮮牛肉の日本輸入の早期解禁への期待に適切に応えるのは重要である。もちろん衛生上の考慮は不可欠である。ウルグアイは口蹄疫に汚染されている南米のうちにあり、非汚染の米国や豪州と同じ立場にはない。ただウルグアイは口蹄疫ワクチン接種清浄国であり、牛肉の品質管理に万全を期している。両国の家畜衛生当局間で技術的な観点から協議を行うことになっているが、日本の反応は停滞気味のようである。

 折しもTPPの大筋合意で農牧産品も大きな変化にさらされる時期が来た(現在38・5%の牛肉の関税はTPPの発効時に27・5%に下げ、16年間で段階的に9%まで引き下げられる由である)。両国家畜衛生当局が認める最大可能な範囲内で、ウルグアイ産生鮮牛肉の日本輸入の早期解禁を検討する時期が来たのではないだろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム