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2016-02-08 10:28

日米韓の結束強化が焦眉の急

鍋嶋 敬三  評論家
 北朝鮮による4回目の核実験(1月6日)に続く2月7日の長距離弾道ミサイル発射によって、日米韓3カ国の安全保障態勢の結束固めが焦眉の急になってきた。日韓両国間で軍事情報を提供し合う軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を早期に締結すべきである。2012年6月に締結が予定されながら、直前に韓国内の反発で突然中止になった。朝鮮半島をめぐる安保情勢が急展開しているため、締結へ朴槿恵政権の決断を促したい。米韓両国はミサイル発射に間髪入れず、高高度防衛ミサイル(THAAD)システム配備についての協議を開始した。中国が韓国への配備は中国への脅威になると反対、中国傾斜を強めてきた朴政権がこれまでゴーサインを出さなかった。

 日本と米国によるミサイル防衛システムの共同開発は1990年代からの北朝鮮による核・ミサイル脅威に対応するため進められてきた。日米韓3カ国による協力が強化されれば、北東アジアの安全保障上の大きな網がかけられることになる。日本を射程に入れたノドン・ミサイルは既に実戦配備され、テポドン2派生型は米本土を攻撃可能な射程10000キロ以上とされる。今回のミサイルは核弾頭が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の性能向上を目指したというのが西側専門家の見方だ。「初の水爆」と称する核実験から1ヶ月での「地球観測衛星」という名目の長距離ミサイルは、飛距離や正確さにおいてかなりの進展を遂げたと見るのが普通だろう。

 国連安全保障理事会は8日(日本時間)未明、日米韓3ヵ国の要請で緊急会合を開き、北朝鮮による「新たな安保理決議違反を非難し、迅速な決議の採択を目指す」という議長声明を発表した。日米韓連携の成果である。しかし、北朝鮮の行動は核・ミサイル開発をめぐる米中両国の意見の相違を突いたものである。1月27日北京でケリー米国務長官と会談した王毅中国外相は核実験をめぐる新たな安保理決議は「半島情勢に新たな緊張をもたらすものであってはならない」と、厳しい制裁に反対の姿勢を明確にした。ケリー氏は会談で最も時間を割いたのは北朝鮮問題だとした上で、核実験は世界に対する「公然たる脅威」で、「核弾頭を搭載できるICBMの開発は米国に重大な脅威だ」と強力な制裁を求めた。しかし、米中の姿勢がかみ合わないのを見て取った北朝鮮は長距離弾道ミサイル発射を強行した。中国外務省は7日「関係国の冷静、慎重な行動」を求めたが、強力な制裁決議の採択をけん制するいつものやり方が北朝鮮から足元を見られるのである。

 米国内ではオバマ政権のアジア・リバランス(再均衡)政策の腰が定まっていないことへの疑問が強まっている。上院軍事委員会の公聴会(2月3日)で、日本専門家のM.グリーン氏(戦略国際問題研究所)、元太平洋軍副司令官J.コナント退役海兵隊中将が共同で証言。この中で(1)明確で一貫した戦略が必要、(2)同盟国、友好国の軍事能力と相互運用性の向上で共同対処能力を高める、(3)米軍事プレゼンスを拡大し、朝鮮半島の紛争抑止、南シナ海からインド洋に至る危機管理、(4)米艦船や前進基地に対する弾道ミサイルに対処する革新的能力の開発ーを勧告した。証言は同研究所が1月にまとめた「アジアー太平洋リバランス2025」と題する報告書を踏まえたものである。(2)では日米統合作戦司令部の設置、(3)では韓国へのTHAAD配備を挙げている。中国の東シナ海、南シナ海での軍事的攻勢に加え、北朝鮮の核・ミサイル開発の飛躍的進展に対し、オバマ政権が最後の1年にリバランス政策の「再生」を果たせるかどうかが、アジアの軍事バランスを大きく左右する。
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