国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-03-01 06:55

キャスターたちよ、「怒っている」のは私たちの方だ

杉浦 正章  政治評論家
 「私たちは怒っている」と民放テレビ札付きのキャスター、司会者らが総務相高市早苗の電波停止言及発言に噛みついたが、「怒っている」のは私たち視聴者の方だと言いたい。最近の一部民放テレビの報道姿勢には甘えがあるとしか思えない。どうせ政権側は何もできまいと言う甘えだ。近年、著しく偏向報道されたのが安保法制と秘密保護法をめぐる「反自民・安倍」キャンペーン報道だ。「戦争法だ」「知る権利を脅かす」と言いたい放題の報道を繰り返したが、今でもその報道に踊らされている国民がどれだけいるだろうか。左寄りの共同通信の調査ですら、安保法を「廃止すべきでない」が47・0%で、「廃止するべきだ」の38・1%を10ポイント近くも上回っている。この傾向は北の核・ミサイル実験でさらに強まろう。

 その「私たちは怒っている」というお偉いキャスター様らの先頭を切っている岸井成格は、昨年9月に「メデイアとしても安保法制の廃案に向けて声を上げるべきだ」と発言、明らかに政治的公平性を求められる放送法違反と指弾された。過去にテレ朝幹部が行った発言とそっくりである。報道局長の椿貞良は「なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と他局に偏向報道を働きかけたのである。郵政省は厳重注意する旨の行政指導を行うとともに、1998年のテレビ朝日への再免許の際に、政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付した。放送法違反として電波法第76条に基づく無線局運用停止がありえた事例である。しかしその後もテレ朝は“改心”どころではなかった。2009年にはコメンテーター・吉永みち子が「我々も鳩山政権を支えている」と驚くべき偏向発言をしている。「怒っている」キャスターらに「ルーピー鳩山政権だったら、公共の電波を使っていくら支持を表明してもよいのか」ということを聞いてみたい。そもそも高市早苗の発言は当たり前のことを言っただけだ。高市は衆議院予算委で、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性について言及した。誰が判断するのかについては、「総務大臣が最終的に判断するということになる」と明言した。野党が繰り返ししつこく問いただした結果の答弁である。

 これを民主党や民放が鬼の首を取ったように問題視しているが、ブーメランによる直撃必至だ。菅直人内閣時代の平成22年11月、総務副大臣・平岡秀夫は参院総務委員会で、「放送事業者が番組準則に違反した場合には、総務相は業務停止命令、運用停止命令を行うことができる」と答弁してる。民主党政権の方が先ではないか。要するに、放送法に違反すれば電波法に基づき電波停止処分があり得る、と法律に書いてあるのだ。キャスターらも文句があるなら法改正が達成されるよう運動をすべきであり、本末転倒とはこのことだ。言うまでもなく日本は法治国家であり、閣僚の国会答弁は法律に基づいて行われる。その答弁を野党やマスコミが否定しては法治国家を自ら放棄することになり、より危険な国家へと変容する。それにつけても最近の民放の報道の偏向ぶりは見るに堪えないものがある。2月28日のTBSテレビの時事放談はもはや手がつけられなくなってきた。偏屈爺さんならまだいいが、偏向爺さんが公共電波を使っていることなど全く意に介さぬがごとく、言いたい放題。しかも「誤報」の連続だ。

 藤井裕久が「本当のことを言うと、私は反安倍なんです」というのは勝手だが、「安倍政権は末期的症状であると思う。(不祥事が)これほどまとまって出るのはめずらしく、歴代内閣もこれで終わっている」という発言は、誤判断もいいところだ。マスコミが取り上げているゴミネタをを大げさに誇張してとらえているが、もうろくしたのか、支持率を忘れている。「末期症状」というのは、NHKの調査で鳩山由紀夫の支持率が21%、菅直人が16%、野田佳彦が20%で野垂れ死にしたような状態を言うのであり、支持率50%の政権に言う言葉ではない。 藤井は民主党政権が愚かにも除染の長期目標に掲げた「年間1ミリシーベルト以下」をめぐり、環境相・丸川珠代が「何の科学的根拠もなく時の環境相が決めた」と発言したとされる問題について、「丸川発言はめちゃくちゃ。国際機関の1㍉シーベルトから20㍉シーベルトの範囲で一番厳しいものを取った」と自慢げに発言した。これこそハチャメチャ発言だ。IAEAは「標準人が被ばくする年間実効線量は、通常、1~20㍉シーベルトの範囲内とする」としている。20㍉で十分なのだ。民主党政権は当初野田佳彦が「年間の追加被曝線量20㍉シーベルト」としていたが、朝日などの反対で、細野豪志の「年間1㍉・シーベルト以下」答弁に至るのだ。1㍉・シーベルト以下がどういうことかと言えば、まさに莫大(ばくだい)な国税を投入して達成不能のシーシュポス神話を行っていることになるのだ。そもそも日本人が浴びている放射能は太陽など自然に降り注ぐものが1.5㍉シーベルトあり、これにレントゲン検査を平均すると4㍉シーベルト。丸川の発言に科学的根拠があって、逆に藤井は科学的無知をさらけ出したのだ。読売新聞社説もかつて「1ミリ・シーベルトへのこだわりを捨てたい」と指摘している。

 時事放談では民主党政権下で民間で初めて中国大使となった丹羽宇一郎が、これまた言いたい放題。安倍政見批判を繰り返し得意の論語を引用し、「信なくして国立たず。国会議員が信用なくしているから、総理の話も半信半疑で聞いている」と断定したまではご立派だったが、「国会議員の皆さん。ご自分発言で綸言糸の如しという言葉を考えて欲しい」と知ったかぶりの発言をしてつまずいた。綸言糸の如しは、天子の口から出るときは糸のように細い言葉が、下に達するときは組み糸のように太くなる意味だ。天子の言葉や天皇の仰せごとを言うのであって陣笠代議士に使う言葉ではない。無知から来る浅はかな用語だ。丹羽はかつて衆議院議長・横路孝弘と国家副主席・習近平と会った際、都知事・石原慎太郎による沖縄・尖閣諸島の購入表明を支持する意見が国民の多数を占めることについて「日本の国民感情はおかしい、日本は変わった国なんですよ」と、臆面もなく媚態を示してひんしゅくを買った。この程度の知性の人物の巧言にだまされて大使に起用したのが、外相であった岡田克也だ。史上最大のミスキャスト人事であった。こうした人物を使ってTBSは政見批判ばかりを繰り返しており、これで「私たちは怒っている」の輩(やから)が指摘するようにメディアは萎縮しているのだろうか。むしろ電波至上唯我独尊の全体主義の方が心配になる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム