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2016-04-22 07:41

(連載2)アベノミクス:企業統治と資本市場

島田 晴雄  千葉商科大学学長
(2)ガバナンスコードの策定
 成長戦略では、前述の「(1)社外取締役制度の導入」につづいて、企業価値最大化のためにガバナンスコード(企業統治のための行動規範)を策定するよう提案し、金融庁と東京証券取引所が2015年6月の株主総会シーズンまでに企業が策定するよう指導することとした。これは企業経営の透明性、公正性を高め、経営資源の有効活用を促進すると期待されている。

(3)スチュアードシップコードの導入
 これは、機関投資家が、投資先企業に対して経営改善要請など投資方針を表明することで、一般投資家も投資先企業をより深く理解し、より積極的に投資するよう誘導する英国生まれの取り組みである。日本ではこれまで常態だった”もの言わぬ株主”の文化を、積極投資の文化に変えることが期待されている。

(4)GPIFの運用方針の積極化
 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は年金基金など約130兆円を運用する世界最大級の公的年金運用団体だが、これまで国債などリスクが少ないと思われた債権を中心に運用をしてきた。アベノミクスでは、よりハイリターンを期待しうる株式などの運用比率を高めるよう要請し、2015年から内外株式などリスク資産比率が半分ほどに高められた。

(5)JPX日経400インデックス
 2014年1月に開発・導入された「JPX日経400インデックス」は、日本企業がROE向上の重要性をもっと認識し、ROEの向上に向けて企業戦略を見直して尽力すべし、というアベノミクスの呼びかけに応える民間の仕組みである。多くの企業がこのインデックスで評価されるよう資本政策などを変革した結果、それら企業のROEは短期間に飛躍的に高まった。

 上記(1)~(5)の一連の改革は、日本企業に株式市場などを媒介してより積極的かつ効率的に資金を活用させる上で、ROEの向上など一定の成果を挙げた。資本政策で数字上引き上げられたROEを裏打ちする企業効率の真の向上が実行されるか、株式運用比率を高めたGPIFの運用ならびに管理体制は大丈夫か、など幾多の課題は残されるが、短期に可視的成果を挙げたという意味では、企業統治と資本市場の改革は、アベノミクスの成長戦略の中ではもっとも成功した例と言える。(おわり)
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