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2007-03-15 11:01

連載投稿(1)核兵器の全面廃絶の願いをこめて

藤原宣夫  日本国際問題研究所評議員ほか団体役員
 平成17年9月、私は六本木男声合唱団倶楽部の一員として広島を訪問した。団長の三枝成彰氏が原爆で犠牲になった子供達を追悼した詩に感銘して作曲されたレクエム「川よとわに美しく」を平和への祈りをこめて合唱する為であった。素人集団にもかかわらず、演奏会の後、深い感動に包まれた会場からはすすり泣く方々もみかけられた。

 その夜、打ち上げの会に最後までお付き合い下さった秋葉広島市長のお話を紹介したい。原爆被災の中心地の広い道路や整然とした区画整理があまりにも立派なのでその旨を市長に申しあげたら、市長から大変衝撃的な説明が返ってきた。「何故道路の幅が広くなったかを先輩から聞いています。それは被爆した道路の両路肩には多くの犠牲になった子供たちの骨がうずまっているので、地権者達は皆、家の再建に当たってその部分を市に寄贈してくださったのだそうです。広い道路の理由はこんな悲劇の結果から出来たのですよ」と。

 2年程前、日本経済新聞の呼びかけで戦後60年を記念した戦争体験記「孫たちへの証言」に応募した私の原稿はたまたま採用された。その中で私は広島の原爆の体験を語っているが、私は昭和7、8、9年生まれの人が最多数の被害者であったと書いている。理由は広島市の中心地で焼夷弾での類焼を防ぐための家屋の倒壊作業に動員されていたのが当時中学校、女学校の1年生たちであった。国民学校(現在の小学校)の児童の大方は疎開していて、当時市中にはいなかった。中学校、女学校の高学年性は体も大きくなっていたので、近郊の軍需工場での勤労動員に従事しており、死傷者は少なかった。私の友達たちは広島の爆心地で朝8時から家々の柱にロープをかけて、力を合わせ家屋の倒壊作業に従事していたので、全員一瞬のうちに死亡したのだった。

 このことは私の頭の中に一生こびりついて離れない。サラリーマンを退職した12年前、私は世界的に核兵器の全面廃絶論者として著名な鴨武彦先生が早稲田から東大法学部政治学科の教授になられたのを機に師事したのだった。日本国際政治学会会長に就任されご指導を仰いでいたが、先生は志半ばで病に倒れ、惜しくも亡くなられた。残念でならない。(つづく)
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