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2016-07-06 06:48

結局増田が都知事候補に最適だろう

杉浦 正章  政治評論家
 江戸城の盟主になるのだから、政治家は皆血湧き肉躍るのだろう。驚いたのは、筆者がもう死んだと錯覚していた昔新自由クラブ旗揚げで名をはせた山口敏夫までが、7月5日手を挙げた。しかもその発言たるや、1番いい。オリンピックの競技場やエンブレム問題で国税を無駄遣いした組織委と森喜朗を公然と非難して、訴求力がある。小池百合子は「なりたい、なりたい」が先行して、全く政策を語らない。その点老いたりとはいえ、山口は急所を突いている。しかし、実体は泡沫候補に毛が生えた程度だろう。本人も、まだ生きていることの証しのように立候補したのかもしれない。驚いたことに小泉純一郎と細川護煕が記者会見したから、これまた血湧き肉躍ったかと思ったが、そうでもなかった。細川は小池を政治家にし、小泉は閣僚に抜擢した張本人だが、小池にはエールを送ったに過ぎなかった。それはそうだろう。前回2014年の都知事選で、2人はタッグを組んで、細川の「殿ご乱心出馬」を演出し、3位に終わって、大恥をかいたのだから。2人とも都民からは足元を見られて、認知されていない。

 それでも「度胸がある」(小泉)「いい勝負勘」(細川)と小池を褒めるあたりは、小池をけしかけた2人の張本人という説を裏付ける。とりわけ、ことあるごとに大舅(おおじゅうと)のように安倍につらく当たる小泉が、けしかけた形跡が濃厚だ。今後の流れは、首相・安倍晋三が参院選を控えて自民党が分裂選挙に陥ったような印象を避けるよう厳命を下していることの一点から見れば、分かりやすい。安倍にしてみれば、せっかく参院選圧勝実現を眼前にして、都知事選での分裂の印象が広がり、マイナスに作用することは、何が何でも回避したいのだ。官邸も都議会自民党も、小池の党を裏切るような立候補に激怒しているのが実態であり、増田擁立をためらっているわけではない。既に都議会自民党は増田擁立で固まっており、これに棹さすことは極めて困難だ。とりわけ自民党は最近実施した同党の世論調査で、増田有利と見たのだ。小池と増田が拮抗し、小池が頭だけ出ている事が分かったことが大きい。なぜ増田が負けているのに有利と判断するかと言えば、調査の実施が増田が候補になっていない時点であり、候補になって自公が組織的に応援を開始したら、浮動票だけに頼る小池の優勢は逆転できるという判断が背景にある。

 したがって、小池の実態は政治的には孤立の色彩が濃厚なのである。小池は石原伸晃との会談後、自民党の推薦がなくても「出馬の意思は変わらない」と強気な一方で、出馬取りやめの可能性を聞かれて「低い」と答えた。普通なら「ゼロ」と答えるところだが、「低い」は気になる。たとえば人事で優遇などのおいしい話があるのかないのか、微妙だからだ。マスコミは小池と増田の「分裂選挙」とはやし立てるが、「分裂」とは党を2分した選挙のことを指す。今回の都知事選は、自民党内で孤立した小池が無理強いで選挙に出るだけのこと。「分裂選挙」とは言いがたい。小池も、出馬すれば、反自民の旗幟を鮮明にさせて浮動票を狙うしかあるまい。自民党内に同情票はほとんど存在しないと言ってよいからだ。おまけに、小池が代表の政党支部が、支援者の所有するビルの1室を相場より安く借りているという政治資金規正法上の問題が浮上し、「政治家都知事は駄目」の印象を強くしている。小池は否定しているが、ここで弁明を強いられることは、選挙対策上きつい。

 一方、民進党は、蓮舫に逃げられて、有力候補がゼロと言った感じだ。一部に蓮舫が参院に当選した後、都知事選に鞍替えするという、ウルトラC情報がまことしやかに流されているが、これは参院で蓮舫に投票した有権者への裏切り行為であり、民進党にとっては“邪道の選択”というべきものだろう。いくら追い詰められたとはいえ、そこまで都民を欺いてはなるまい。自民党が増田を出せば、これに相乗りする考えもあったが、岡田らの強い反対で消えた形だ。今出ている候補は長島昭久だが、この候補も知名度がないうえに、必要な浮動票を取れるカリスマ性もない。加えて党内右派に属しており、共産党票も逃げる。したがって、集票力のない「出るだけ候補」の色彩が濃厚だ。こうして消去法で見てくると、長年コメンテーターとしてテレビに登場、その外連味(けれんみ)のない発言で、誠実な人柄を感じさせてきた元岩手県知事・増田が、東京都にとっても、自民党にとっても、現段階で最良の候補ではないかと思える。
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