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2007-03-30 17:10

新しい視点に立つ「占領研究」を

奈須田敬  並木書房取締役会長・月刊「ざっくばらん」編集長
 敗戦国日本を裁く連合国(アメリカ以下11ヵ国)の極東国際軍事裁判(「東京裁判」―開廷:1946年5月~閉廷:1948年11月)が、いよいよ大詰めにかかろうとする昭和23年(1948年)2月末、米国務省政策企画室長ジョージ・F・ケナンは東京の連合国軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥に会うべく、シアトル空港を飛び立った。目的は一つ。対日占領政策の是正・改革というより大転換をマッカーサーに迫る。ケナンにとっては重大な決意を必要とする旅であった。それが、アメリカにとって第二次世界大戦後における画期的な外交政策(いわゆる「対ソ封じ込め政策」)の一環であると同時に、ケナン自身にとって、傲岸、神懸かり、カリスマ的存在であるマッカーサーと直接談判し、完全に説得できるかどうかの、大きな賭でもあった。そして成功した。

 ケナン自身がそのことを回顧録の中に、誇らしげに書いている。≪私がマッカーサー元帥を訪ね、会談し、最後にはワシントンから指令が発せられたこと、これらが一体となって、1948年末から1949年初めにかけて行われた占領政策の改革に大きく寄与した。そして私はこの変革をもたらした私の役割は、マーシャル・プラン以後私が政治上に果たすことができた最も有意義な、建設的な寄与であったと考えている。これをただ一つの例外として、私はこれまでこのような大きな規模と重要性を持った献策を試みたことはかつてなかった。そして、私の献策がこのように広く、ほとんど完全といえるくらいに受けいれられたこともなかった≫(『ジョージ・F・ケナン回顧録(上)』、読売新聞社、1973年)。

 ヨーロッパ復興に対して行われたマーシャル・プランと同じレベルにおいて、ケナンのマッカーサー会談が論じられているところに、われわれは注目しておきたい。ケナンの「献策」がどのような内容のものであったか。同回顧録は諸分野に亘る改革についてつぶさに記録しているが、省略する。はっきりしていることは、被占領国の首相吉田茂が身をもって、その成果を受けとめていることだ、彼の回顧録(『回想十年』(新潮社、昭和32年))の中に、ケナンの名前は出していないが、その「管理政策第二段階へ」の項や、総司令部(GHQ)内の動きについて、貴重な記録をのこしている。
 
 占領政策の研究は、現在の日本国民にとっては、もはや「死児の年齢」を数えるように、過去の遺物視されている。しかし、広義かつ歴史的な視野でアメリカおよびアメリカ人を研究する立場に立てば、戦後日米関係の原点がそこにあったことは、厳然たる歴史的事実である。「民主化」「自由」「人権」の “印籠” をかざして日本人を「恐れ入らせた」占領政策の真意が日本という国の「弱体化」「無力化」にあったことは、いま多くの識者が声を大にして叫んでいる。

 しかし、他方で、占領軍内部にあって、アメリカ本国にあって、知日派、親日派といわれる多数のアメリカ人が、占領政策の是正、改革、転換のために渾身の労を惜しまなかった事実をも認めなければならない。ケナン、グルー(元駐日大使)氏らの名前は顕著であるが、GHQ情報部長C・A・ウィロビー少将などが、占領期間中いかにGHQ内部の「敵(親ソ、左翼系分子)」と戦ってきたか。殆んどの識者は知らないのではないか。それを正確に評価したのは、吉田茂であった(『回想十年』)。前回、吉田―岸外交の再評価を提案したが、新しい視点に立つ占領研究の必要性を強調したい。
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