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2016-11-05 00:19

(連載2)「核兵器禁止条約」決議への反対投票は誤りである

角田 勝彦  団体役員、元大使
 日本は、佐野利男軍縮大使が「核軍縮を実効的に進めるには、核保有国と非保有国の協力が不可欠だ」と説明し、反対した。安倍首相は「(反対票を投じるとの)判断は、簡単ではなかった」と述べている。他方、日本は10月13日核兵器廃絶決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」を同委員会に提出した。これは、1994年以来23年連続しての提出である。米国を含む約110か国の共同提案であり、全体で167か国の支持を得ている。昨年を上回る共同提案国と支持国であり、10月27日に採択されている。「すべての国が核兵器の全面的廃絶への共同行動をとる決意を新たにする」とし、「NPT体制の普遍性をさらに強化する決意を再確認する」と明記した。2015年のNPT再検討会議は決裂したが、次回20年の会議に向けて「最大限努力する」とした。

 「核兵器禁止条約」決議案への一般の賛成は多い。非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、支持を表明している。被爆体験を伝えるため世界一周の航海を続けている広島と長崎の被爆者らは、10月20日、国連本部の核軍縮に関する討論会で、本決議案について「71年間訴え続けてきた核廃絶の第一歩だ」と歓迎した。米国などの核保有国が核抑止力による安全保障の重要性を強調して、この決議案に反対していることに対しては、「どこかで核戦争が起きれば人類は破滅する。国家を超えた人類の安全保障を考えるべきだ」と訴えた。

 我が国は唯一の核被爆国である。「核なき世界」を訴えている。原爆を「絶対悪」とするのは、公明党を含む多くの政党の考えである。2016年8月6日松井市長は平和宣言で、原爆は一瞬で街を焼き尽くし、広島にいた朝鮮半島や中国の人、米兵捕虜らも含め、罪のない人々を殺戮(さつりく)したとして、「絶対悪」と表現した。安倍晋三首相は式典挨拶で、オバマ氏の広島演説をたたえ、「核兵器のない世界に向けて努力を積み重ねる」と述べた。昨年は言及しなかった「非核三原則の堅持」にも触れた。

 筆者が本年8月の本欄への寄稿「核兵器の『先制不使用宣言』について」で述べたように、核軍縮の機運を高め、核保有国に圧力をかけるためには、日本も理想に傾くことが必要だろう。「核兵器禁止条約」決議案への反対は、現実主義に傾きすぎたと考える。(おわり)
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