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2016-11-10 11:24

(連載1)トランプのアメリカとこれからの日本

島田 晴雄  前千葉商科大学学長
 ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国の大統領になった。大統領選史上最悪の罵り合いと言われた今回の大統領選挙は異例ずくめだった。何よりも、街の不動産屋として金儲けはしたかもしれないが、政治のみならず公職も軍務の経験もなく全く無名の泡沫候補だったトランプ氏が足掛け2年間におよぶ選挙戦中に頭角を現し、みるみるうちに名だたる共和党の練達政治家を打ち負かして共和党大会で大統領候補の指名を勝ち取り、大統領選の本選では先行するクリントン候補を猛追して、とうとう最終投票日では過半数の代議員を獲得して大統領の座を勝ち取ったことが象徴的だ。

 選挙戦中の言動をつうじて明らかになったことは、クリントン候補による「大統領として不適格」との批判を引用するまでもなく、トランプ氏がひどくマナーが悪く、驚くほど知識が無く、経験が欠如しているということだった。彼の”不適格さ”は伝統ある共和党主流派の元老達が本選の終盤にかけて共和党としてはトランプ氏を支持しないという異例の態度をとったことが物語っている。しかし、どれだけの欠陥があろうとも選挙民(代議員)の過半が彼を支持したからには彼がいまや大統領であることは動かしがたい事実である。それがアメリカの民主主義の帰結である限り、私たちはこれから少なくとも4年間はトランプのアメリカとつきあって行かねばならない。

 それでは、私たちの国「日本」はどのようにつきあっていけば良いのだろうか。トランプ氏は選挙戦中にほとんど暴言ともいうべき多くの政策を唱えた。不法移民を止めるためにメキシコとの国境に万里の長城を築かせる、イラクへ派兵して油田を占領する、など枚挙にいとまがない。しかし彼は主な主張は一貫して唱えており、それなりに本気なのだろう。日本に直接関連する主張もいくつもあった。それらの多くは世界政治の常識から見れば恐ろしく荒唐無稽なものである。政治の専門家や評論家は、選挙戦中の発言は実際に大統領になると行政機構や内外の現実をふまえて修正され調整されることが多いと指摘するが、しかし、多数の選挙民に向けての公的な発言はいわば公約であり、その主張の趣旨を基本的に変えることは難しい。

 そうであるとすれば私たちは、次期アメリカ政権がトランプ氏の主張の趣旨をできるだけ貫こうとするという前提に立って、対応策を考えるべきだろう。日本に関する多くの発言のなかで、例えば以下の3点に注目して、日本の対応のあり方を考えてみよう。それらは(1)TPP、(2)雇用機会の流出、そして(3)日米軍事同盟、である。(つづく)
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