国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-06-30 10:32

国民投票の難しさ

船田 元  衆議院議員(自由民主党)
 憲法改正の手続きとは、その96条が示す通り、まず衆参両院議員のそれぞれ3分の2以上の賛成により国会が発議し、国民投票において有効投票の過半数を得て、ようやく改正が実現する。しかしこれまでの改正に関する議論の中では、とにかく国会の3分の2以上の獲得が最大の主眼で、国民投票は後からついてくるといった考えが蔓延している。しかし改正手続きのクライマックスは国民投票であり、かつ不確定要素が一杯あって、なかなか容易ではない。最短で60日、最長で180日も続く国民投票運動は公職選挙法の適用を受けず、特定公務員の運動禁止、地位利用の禁止、大規模な買収などを除いては、ほぼ自由に行われる。その運動のやり方によっては、国会の多数と違う結果が生じることも十分あり得る。
 
 現に昨年のイギリスのEU離脱をめぐる国民投票では、事前の残留優勢を覆して離脱が過半数を獲得したことに全世界が驚いた。未だにその混乱は尾を引いている。アメリカの大統領選挙も国民投票ではないが、大方のクリントン優勢に反して、トランプが勝利を納めた。国民世論がどう動くのか、予測がつかなくなっているのが現代の特徴だ。日本国憲法の改正に当たっても、9条の改正であれ、教育の無償化であれ、とにかく改憲勢力が国会の3分の2を占めている時に、早く発議してしまおうという考えは、国民投票でしっぺ返しを食らうかもしれない。むしろその可能性が大きい。
 
 我々が目指すべきは、国会の発議において、できる限り野党第一党である民進党まで巻き込んで、賛成してくれれば上出来だが、そうでなくても、最低限反対しない、反対しても了解の上で採決するところまで持ってこないと、安心は出来ない。国論を二分する9条においては尚更である。さらに憲法改正国民投票を国政選挙と同時に行うべきとの声も聞かれるが、これは邪道である。そもそも政権や政党を選択する国政選挙と、国民全体が関わる基本的な政策選択を同時に行うことは、国民の混乱を招くばかりだ。選挙運動と国民投票運動が同時に行われれば、「かこつけた」選挙違反が横行しかねない。

 百歩譲って、国民投票期日が決まった後、衆議院が解散になってたまたま同時になることは止むを得ないとしても、最初から同時投票を目指すとしたら、国民の冷静な判断を妨げるものであり、決して許されるものではない。国会の発議を目指すもの、改憲を目指すものは、もっと国民投票の重要さと難しさを学ぶべきである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム