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2017-07-19 10:34

トランプ政権発足6か月を経て

四方 立夫  エコノミスト
 トランプ政権が発足して早くも6カ月が経過した。既に世界中に予想を上回る大混乱を引き起こし、もはや多くの国が米国を世界のリーダーとは見做さなくなりつつあり、中国の台頭、北朝鮮の暴走、ロシアの復活を後押しすることとなった。一時期トランプは習近平との夕食時を狙ってシリアにミサイル攻撃をし、北朝鮮に空母を派遣して圧力を強める動きを見せたものの、結局その後が続かず、中国及び北朝鮮にトランプの言動は所詮「ブラフ」に過ぎないと見透かされ、中国は北朝鮮に対する経済的圧力を強めることなく、北朝鮮の「ICBM実験成功」をもたらした。

 したたかな中国はキッシンジャーを通じてクシュナーを取り込み、イヴァンカとその娘を中国大使館の「春節の宴」に招き、クシュナーの親族が経営する不動産開発会社をつうじて中国から米国への投資を呼びかけた。「利益相反」が問題視されており、トランプ政権はその発言とは裏腹に実質的には「親中」に傾きつつあるのではないかと危惧される。このまま米中の間で”Deal”が成立し、北朝鮮にICBMの開発は「断念」させるが、短距離~中距離ミサイルに関しては「黙認」することになれば、我が国にとっては最悪のシナリオとなる。北朝鮮は「極秘裏」にICBMの開発を続け、近い将来には米国本土もその標的となると共に、既に我が国に照準を合わせていると言われる100発を超える短/中距離ミサイルすべてに核弾頭が装着されれば、もはや手の打ちようがなくなる。

 一方、トランプは早々にTPPを離脱し、多国間ではなく2国間のFTAを模索すると共に、NAFTAの改訂にも着手し、「保護主義色」を強めつつある。その中で我が国がEUとのEPAに「大枠合意」し、米国抜きのTPP11の推進を開始たことは朗報である。カナダは既にEUとFTAを締結しており、日本、EU、カナダ等の自由主義陣営が自由貿易を堅持し、自由主義のルールに基くRCEP、そしてFTAAPへと繋げ、引き続き米国の自由貿易への回帰を説得し続けることが肝要である。それと同時に、自由貿易のもたらす負の側面、即ち競争に敗れた敗者に対する支援、並びに現在自由主義圏の多くで顕著な富の分配の著しい不公正さの改善が重要な課題である。本来「アメリカン・ドリーム」とは「子供の世代が親の世代よりも豊かになる」ことのはずであったが、過去20年間むしろ逆の傾向が明らかになり、ごく一部の人間が「億万長者」になる一方、大多数の国民が貧困に喘ぐようになり、大統領選挙においても「1% vs 99%」が大きな問題となった。

 「外交は内政の延長である」との言葉があるが、逆に言えば、「貿易は国内経済の延長である」。国内における富の分配の著しい不公正(その結果としての貧困と格差)が解消されない限り、自由世界の国民の間で自由貿易並びにグローバリズムに対する反対は収まることはなく、第二、第三の「トランプ」が出現することは必至である。我が国としては今後とも米国を最重要同盟国と位置付けながらも、独自に中国、北朝鮮、ロシア等との間合いを探り、オーストリア、インド等の民主主義国との連携を強化しながら、特に遅れていると言われる宇宙/サイバーなどの分野における独自技術を開発し、自主防衛能力を強化することが喫緊の課題である。合わせて、「自由貿易の旗手」として「メガFTA/EPA」の構築を目指すと共に、「不公正」の解消に努め、各国国民が自由貿易の恩恵を公平に享受できるように貢献することが、アジアの平和と安定に必要不可欠である。
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