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2017-08-21 17:17

日本はいまだに「ひよわな花」

四方 立夫  エコノミスト
 今年もまた終戦の日が訪れた。人々は戦没者の霊に頭を垂れ平和を希求する。然しながら平和は祈るだけでは維持することはできない。先日他界したブレジンスキーは1972年”The Fragile Blossom:Crisis and Change in Japan”を上梓したが、 安全保障に関しては日本は相変わらず「ひよわな花」である。北朝鮮の相次ぐ挑発に対し、トランプは北朝鮮張りの罵詈雑言で答えている一方対話の可能性を示唆しており、 ティラーソンやマティスは声高に対話を唱え、 事実ニューヨークでは両国代表による協議が継続している。このままでは米朝が我が国の頭越しに”Deal”をし、「北朝鮮はICBMの開発を『凍結』し、 米国は北朝鮮の現状の核武装を『黙認』する」という我が国にとって最悪のシナリオとなることが危惧される。将に1971年の「ニクソンショック」以上の「トランプショック」である。

 本年2月の日米共同声明には「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」とあるも、その後に「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」、 並びに「日米両国は2015年の『日米防衛協力のための指針』で示されたように、引き続き防衛協力を実施」とあることを忘れてはならない。即ち、「米国が日本を守ってくれる」のではなく、同指針に繰り返し明記されている通り、「日本は日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し・・・米軍は日本を防衛するため自衛隊を支援し補完する」のである。

 我が国では未だに過半数の国民が憲法9条の改正には反対であり、「平和憲法が日本の平和を保証しており、国際紛争は話し合いで解決できる」と信じている人々が多い。北朝鮮とは1994年の核危機以来、20余年に亘り六ヵ国協議を始め多くの「話し合い」を続け「合意」に達したものの、北朝鮮は何一つとして遵守することなく、他5ヵ国は北朝鮮に核とミサイルの開発の金と時間を与えたに過ぎなかった。先日のWashington Postの報道によれば、北朝鮮は既にミサイルに搭載可能な核の小型化に成功した、との事なるも、そうであればもはや北朝鮮に対する「先制攻撃」は核の報復を招くことが必至であり、日本及び韓国にとって「許容できないリスク」となる。従い、いかなる場合でも北朝鮮に核の使用を思いとどまらせるには、使用した場合は北朝鮮として「許容できない損失」を被ることを理解させるしかない。

 戦後我が国は米国の核の傘に入ることによりその安全を確保してきたが、北朝鮮による核の脅威が現実のものとなった以上、米国の核による抑止に対し積極的に関与しその抑止力の強化を図ることが喫緊の課題である。既に韓国では米軍の核を自国に再配備するとの議論がなされているが、我が国としても「非核三原則」の「弾力的運用」により米国の核抑止力を強化すると共に、NATO、特に敗戦国ドイツ、と米国との”Nuclear Sharing”を参考にしながら、核抑止力の一層の強化を図ることが我が国にとって死活問題である。もはや安全保障に「タブー」はない。
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