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2017-09-08 06:32

“北朝鮮効果”で政局は安倍有利の展開

杉浦 正章  政治評論家
 局面が一か月でがらりと変わった。北朝鮮効果だ。北朝鮮問題を国内政局から見れば、「森友と加計」の空虚な疑惑から首相・安倍晋三を解き放った。支持率は上昇基調をたどっており、逆に前原民進党は支持率低迷状態に「山尾不倫疑惑」 が追い打ちをかけ、踏んだり蹴ったりの状況だ。年内結成を目指すという小池新党も、髭ずらの冴えない衆院議員若狭勝では力量不足でブームなど起きない。最重要ポイントは社会部主導で「モリカケ」を狂ったように追及した朝日が紙面を北朝鮮問題にに一変せざるを得なくなったことだ。社運をかけた“モリカケ倒閣紙面”も、失敗に終わった。このまま対北政策を誤らなければ、安倍には早期解散のチャンスが待っている。一時「危ない危ない」と思ったのは評論家ごときの進言に安倍が乗るのではないかと思われたからだ。田原総一朗が得々として「政治生命をかけた冒険をしないか」と提案したことが「電撃訪朝」であることは分かっていたが、ようやくその内容が「北朝鮮と日米韓中ロで話し合う6者協議の復活を目指した訪朝」であることが分かった。6者協議などという“埋葬”された北説得方式を掲げて訪朝すれば、世界の笑いものになるところであった。乗らなかったのは正解だ。

 安倍の北朝鮮政策は本筋に乗っている。オバマ政権の戦略的忍耐では局面打開困難と判断、トランプと連携して北朝鮮制裁へと動いている。狂気の指導者には力を見せるしかないのであって、今取り得る最良の道は軍事力行使も辞さぬ構えを見せつつ、交渉の場へとひきづり出す事だ。中国と歩調を合わせるかに見えるプーチンは乗らなかったが、重要なことは安倍が主張し続けることなのだ。安倍官邸は北朝鮮問題では水際立った対応をしている。8月29日のミサイル発射のさいも事前に情報を入手、安倍は公邸に泊まり込み、午前5時58分の発射後6時23分には執務室に現れ、直後に記者会見するという手際の良さだった。自民党内では石破茂が乾坤一擲の勝負に出ている。掲げる政策は、「日本への米軍核兵器持ち込みによって、北への圧力を強める」という構想だ。北のおかげで日本人の核アレルギーは再考を迫られ、徐々に崩れ始めているが、まだ石破構想を多数が是認するところまでにいっていない。もともと事態の成り行きを見て安倍が選択すればいい話であり、石破はやや早計であろう。一時は党内で反安倍の動きが台頭したが、北情勢は安倍を叩けば自分たちが叩かれる状況を生じさせている。

 政調会長岸田文雄も、怪僧ラスプーチンのような岸田派顧問古賀誠の「安倍は1年で倒れる」との予言で外相を辞めたが、これも善し悪しであった。この北朝鮮危機を外相として乗りきれば、国民的な評価も高まったが、評価が高まっているのは河野太郎であり、政調会長では出番がない。来年9月の総裁選では、安倍を助けて禅譲路線を狙うのが一番の得策であろう。稲田朋美を更迭したことも利いて内閣支持率は改造後に跳ね上がった。共同通信の調査で8月初めには44%で8.6ポイントも上昇した。その後北朝鮮情勢を経た日経の8月25-27日の調査でも支持率は46%となり、4ポイント上がった。不支持率は3ポイント低下して46%で、支持、不支持が拮抗した。やがては逆転しそうだ。一方、民進党も小池新党も振るわない。共同の9月の調査でも「前原に期待しない」が51.2%、「期待する」は40.3%だ。小池新党も「期待する」が38.4%で「期待しない」が51%。ブームは去った感じが濃厚だ。民進党代表戦は白票が8票出て党内では「離党予備軍ではないか」との見方が生じている。党の体たらくを物語る話ばかりが山積だ。おまけに前原の人を見る目のなさは幻の「山尾幹事長」人事で露呈した。おそらく前原は山尾が、主婦の「保育園落ちた日本死ね」発言問題で安倍を追及した手際を評価したのだろうが、見誤った。不倫では離党は当然だ。議員辞職にもつながるべき話だ。

 朝日のずっこけは安倍にとって天佑というべきものだろう。大体安倍関与の根拠などないモリとカケで倒閣が可能と考えた編集局幹部の考えが甘い。このところの紙面は北朝鮮一辺倒であり、モリとカケは影を潜めた。北への対応に懸命になっている首相をとらえて、あらぬ方向の疑惑にすり替えれば、読者はあきれかえるのが目に見えているから方向転換したのだろう。朝日にしてみれば一段落したらまたモリとカケで政権を追い詰めようとするだろうが、安倍にしてみればその手は桑名の焼蛤だ。だから党内で臨時国会冒頭解散説が流れているのだ。タイミングよく総選挙になれば、北のおかげで結構自民党は議席を取るかも知れない。現在の293議席維持は困難でも270前後はいくかもしれない。そうなれば「安倍長期政権」が復活する。
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