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2018-03-07 09:16

プーチン大統領の再選は盤石か

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ロシアの大統領選は3月18日の投票日まであと約10日に迫った。日本のメディアも、ロシアの体制派メディアの尻馬に乗って「プーチン氏 盤石」などと圧勝ムードを煽っているところが多いが、それほど安泰といえるだろうか。ロシアの反プーチン派メディアの報道などを元に考えてみたい。ロシアの反プーチン派メディア、モスコー・タイムズ紙によると、ロシア議会は2月16日、国内の最低賃金を最大43%も引き上げる法案を可決した。5月までに最低賃金を1万1,163ルーブル(日本円で2万1,041円)に上げるという内容。この法案は、プーチン大統領の要請によるもので、何が何でも再選を確実にしようという、大統領の“手段を選ばない手口”と言える。

 大統領がこういう手段に出たのも、ロシア経済が原油価格の低下とウクライナ問題に絡む西側の経済制裁により、今だに大きなダメージから回復していないことを示している。地方によっては最低賃金アップの元手がないところも少なくないため、ロシア財政省は法案可決後、そうした地方自治体に財政補助を行うと言明した。ロシア政府は表向き、2017年に不況を脱出したと発表しているが、それも地域差があることを認めたといえよう。

 プーチン大統領の不安材料は、経済に止まらない。プーチン氏の強権支配は首相時代も含め2,000年から20年近く続いており、若者や民主派の我慢も限界に近づいていると言っても過言ではない。そうした不満が爆発したのが1月28日、ロシアの約100都市で行われた大統領選の投票ボイコットを呼びかける反体制派デモだった。中央選管に大統領選の立候補申請を却下された野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が呼びかけたもので、モスクワでは数千人規模の参加者がデモ行進した。これに対し、首都警察は支援者らを事前拘束した上、デモ行進でもナワリヌイ氏ら多数を拘束・逮捕した。

 ナワリヌイ氏の立候補申請却下にしても、過去に有罪判決を受けたため、という、民主社会ではありえない理由での却下である。これは明らかな民主派潰しのやり方と言っていい。こうした強権政治が、プーチン氏の再選でさらに6年間も続くことになる。「もうこれ以上、我慢できない」という国民が増えるのも当然である。現在もプーチン氏の支持率は60〜70%を上回る高率とされているが、投開票段階で不穏な事態が起きないという保障はない。前回の大統領選でも、投票直後から不正選挙を疑う市民によるデモ行進が激しく行われた経緯がある。今回も投開票が終わるまで、ロシアの動きを注視したい。「一寸先は闇」というのが、ロシアの現状ではないだろうか。
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