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2018-03-24 19:18

プーチン大統領、圧勝だが投票率70%に届かず

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ロシアの大統領選は3月18日、投開票が行われ、プーチン大統領の4期目の当選が決まった。得票率は開票率99%の段階で76%に上ったが、投票率は67%と、70%の目標には達しなかった。反プーチン派の投票ボイコット運動の成果ともいえ、これが今後、プーチン政権崩壊の「蟻の一穴」となるかもしれない。プーチン大統領は選挙前から「投票率、得票率とも7割以上」の目標を掲げていた。プーチン氏の唯一のライバルともいえる反プーチン派のナワリヌイ氏が立候補を中央選管から拒否され、選挙ボイコットを訴えていたのが大きな理由だろう。それとともに、今後任期6年間を無事乗り切るには、国民、とりわけ若者の支持が必要と考えていたからに違いない。その意味では、今回の勝利はプーチン氏にとって5分5分といっても過言ではない。

 ロシア紙ノーバヤ・ガゼータによると、投票率は地方より都市部に低いところが多く、最大票田のモスクワ市は59・86%と6割を切っている。これは都市部に反プーチン派が多いことを裏付けており、中でも若者の政治不信・政治離れが進んでいることの証しだろう。今後、こうした政治不信を払拭できるかどうかが、安定政権を目指すプーチン大統領の大きな課題になる。もう一つの課題は、プーチン氏の年齢にあるといってもいいかもしれない。現在65歳のプーチン氏も6年後には71歳になるからである。ロシアの平均寿命は男性66歳、女性77歳。とくに男性の平均寿命はウオツカの飲み過ぎもあってソ連崩壊前後、ぐんと下がった。徐々に回復しつつあるものの、男性の平均寿命は依然、女性に比べかなり低い。プーチン氏にとっても健康問題は他人事ではない。

 それ以上に、プーチン氏にとって大きな問題は、これがプーチン氏の最後の任期になるという点だ。憲法上、大統領任期は連続2期までと定められ、本人自身、「この問題で憲法改正はしない」と断言している。そうなると、一時は支持率8割の高率を誇ったプーチン氏でも「レームダック」になる可能性は低くない。そうなった場合、プーチン氏がどう出るかが焦点になろう。彼の性格からすると、強硬策を打ち出して人気回復を図る可能性が高い。今の政治状況からすると、トランプ米大統領とのツバぜり合いが激化する恐れが高い。つまり、米露の軍拡競争が今後さらにエスカレートする危険性があるのだ。

 ロシアとの北方領土問題を抱える日本にとって、この問題を解決できるロシアの指導者はプーチン氏以外考えられない。それだけに、これからの6年間は、プーチン政治24年間の集大成を行うためにも、穏健な政治路線を歩んで欲しいと願わずにはいられない。
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