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2018-05-07 14:08

新たな「トランプ危機」に備えよ

四方 立夫  エコノミスト
 4月18日の日米共同記者会見に於いて、北朝鮮に対しては日米が結束して危機に当たることが確認されたが、トランプ大統領はTPPへの復帰は否定し「2国間交渉」に固執した。その後の南北首脳会談の「成功」を受け、国際世論は一斉に「融和」に傾き、トランプ大統領は早くもノーベル平和賞候補に取りざたされ、史上初の米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化のみならず平和条約締結までも視野に入れた華やかな「政治ショー」となるのでは、との危惧を禁じ得ない。ロシア疑惑、司法介入、相次ぐ政府高官更迭、等に揺れるトランプ政権にとっては中間選挙そして2020年の大統領選挙を睨み、またとないキャンペーンの機会である。

 日米の多くの専門家からは「いつか来た道」となることを懸念する声が数多く上っているが、最早トランプ大統領の耳には届かないのかもしれない。早くも韓国高官からは在韓米軍撤退の声が上がり、トランプ大統領も縮小に向けた検討を軍部に指示したと伝えられており、我が国を巡る安全保障上の危機は増すばかりである。一方、貿易については安倍/トランプ蜜月は終了し、貿易赤字削減に執念を燃やすトランプ大統領の意向を反映し、新たに茂木経済財政再生相とライトハイザーUSTR代表による新通商協議を設けることで合意したが、ライトハイザー代表はFTAに固執しており、米国中間選挙までに具体的な成果を求めてくるものと思われる。 かかる安全保障と貿易の2重の危機にある状況下、我が国としては好むと好まざるとに関わらずトランプ政権との関係強化に努めざるを得ない。

 北朝鮮問題に関しては、トランプ大統領が実質的に「ICBM開発中止と引き換えに短中距離核ミサイル黙認」とのことで合意することがないよう、繰り返し「北朝鮮の完全非核化達成までは最大限の圧力を日米のみならず国際社会が結束して掛け続ける」ことを確認すると共に、従来の延長戦上ではない防衛大綱を作成し、我が国のミサイル防衛力の強化、敵地攻撃能力の確保、防衛産業の育成、など自主防衛能力強化に向けて最大限尽力することが喫緊の課題である。合わせ、国民に対し「米朝間で如何なる『合意』がなされようとも、北朝鮮の完全なる非核化がIAEAによって確認され、拉致被害者全員帰国が達成されるまでは危機は継続しており、万全の備えをすることが不可欠である」ことを説き続けなければならない。貿易に関しては、既にタイがTPPへの参加を表明しているが、更にフィリピン、英国など多くの国々の参加を促すと共に、政官民挙げて米国の上下両院、産業界、農業界、などに米国の早期復帰を強く働きかけることが肝要である。

 又、日EU・EPAを梃にトランプ政権の保護主義政策に翻弄されている日EUの結束を強め、米国にメガFTAsへの復帰が経済面のみならず安全保障面においても同国の国益に適うものであることを説得し続けることが大切である。我が国に対し米国からは次期主力戦闘機に高額のため生産中止となっているF22の導入を求める声が上がっており、貿易赤字と安全保障をリンクさせる意図が明白である。我が国は既に独力でステルス性を持った次期戦闘機を開発する自力を付けつつああり、危機に直面する中で米側の意向を無碍にもできない悩ましい問題であるが、いずれにせよ中長期を見据え我が国の技術力の向上に資するような対応が重要である。今後、我が国は益々政官民の総合力により世界でリーダーシップを発揮し、特に自由主義陣営の核として米国、EU、インド、オーストラリア、ASEAN、等と重層的な戦略的パートナーシップを構築することが喫緊の課題である。
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