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2007-06-06 09:34

日中の戦略的互恵関係とは?

坂本正弘  日本戦略研究フォーラム副理事長
 安倍総理の2006年10月の訪中以来、戦略的互恵関係なる言葉が日中関係を現す言葉として特に中国側から流され、4月の温家宝来日の際もwin, winの関係として強調された。しかし、戦略的という意味が不明であり、更に、互恵といえるかどうか。先日、外務省高官から、戦略的互恵関係の具体的な内容として、大型プロジェクト、東シナ海のガス田共同開発、省エネルギー、環境問題、東アジア共同体などに関する日中の協力の構想を聞いたが、中国に一方的に有利なものが多く、互恵とはほど遠い。

 2007年1月の日本国際フォーラムの「日中対話」で、筆者は中国が日本との戦略的互恵関係を深めたいのなら、日本の国連安保理常任理事国入りを支持すべきだとしたが、それは断られた。さらに、中国の参加者から、中国の環境悪化は世界の汚染産業を一手に引き受けていることにあるのだから、省エネや環境問題で世界は中国を支援するのは、当然だとの議論が有り、これには日本側から強い反論があった。

 安倍総理は今回のG8サミットでは、特に環境問題を重視し、来年の日本でのサミットでの主要議題とする構想と思うが、賛成である。しかし、環境技術、省エネルギー技術は、日本の切り札であり、その協力に当たっては相手国の環境問題への自覚と努力が前提であることを、特に中国には主張すべきである。中国の環境汚染は際だっている。中国は自国の発展は他国に迷惑はかけないといっているが、実際には、東シナ海、日本海の汚染はひどく、黄砂が典型だが、大気汚染は東アジア全体に大きな被害をもたらしている。韓国の被害は日本より大きいはずである。中国がまず環境問題、省エネに対する自国の責任と努力を示すべきであり、日本はその上で中国政府の強い要請を待って援助を行うべきである。

 よく、日本には中国からの環境被害を軽減するため、中国政府の要請がなくとも援助を行うことは、自国の利益のためだという議論があるが、中国の自覚と努力が前提であることを強く主張すべきである。まして、日本の協力は戦略的互恵から当然だというのでは論外である。被害を受けるのはまず中国自体であり、中国の自覚と努力がない中で、援助を行っても効果がない。この関連でいうと、京都議定書の排出権売買制度は不可解である。中国企業が排出権売却資金獲得のため、環境汚染を高めている面があるからである。

 以上、中国に厳し過ぎるという意見があるかも知れない。しかし、残念ながら、中国製品への不信は国際的に急激に拡がっている。中国産ペットフード、歯磨き問題が典型だが、中国企業の倫理が問われている。中国食品への不信も強い。小生が付き合っている北京の中国共産党員自身が「淡水魚は食わない」といっていた。中国産のウナギ、ピーナツ、ニンニクなどは日本産に比べて圧倒的に安い。また、漢方薬も有名である。相互依存の高まった中で、これらのものを安心して消費できる日が一日も早く来ることを望むものである。しかし、それにはまず、中国政府、中国人の自覚と実行が先決であることを改めて主張したい。
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