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2018-07-02 11:02

中国国内経済に要注意

四方 立夫  エコノミスト
 日本国際フォーラムが刊行した『JFIR WORLD REVIEW』創刊号の「中国外交のユーラシア的展開」と題する論文における駒澤大学の三船恵美先生の「一帯一路をユーラシアにおける経済圏構想として語っている人々は、目先の経済活動の利益にばかりとらわれて、日本の安全保障の将来を差し出そうとしている」との御指摘は誠に至言である。一帯一路、AIIB、東/南シナ海進出、等の対外活動に加え、我々は中国国内経済動向にも注意する必要がある。従来より中国の不良債権、過剰債務、過剰生産、過剰在庫は中国経済の根本的な問題であると広く流布されてきたが、今年に入り政府系港湾運営会社、国有建設会社、等の債務不履行が報じられ、1-6月で日本円換算4,000億円超となり通年では過去最悪となる怖れも指摘されている。

 その背景には過剰債務を解消するための政府による金融引き締めがあるが、最も憂慮すべきはバランスシートに記載されず、不良債権発生率の高いシャドーバンキングである。その2017年6月末の規模は61.8兆元に上り2016年GDPの83%に相当する、との試算もある。1990年代の日本は「バランスシート不況」に陥ったと言われていたが、中国も同様に過剰債務/過剰投資が重荷となり、その解消のために企業の資金需要が悪化し、経済成長率の下落を招き、労働需要が減少することによる大量失業の発生は、共産党による一党支配の屋台骨を揺るがしかねないリスクがある。

 一方、中国は「中国製造2025」を邁進し2049年までに世界の製造強国のトップに立つことを目指しているが、その「九つの戦略任務」の中で特に重要なものは「製造業のイノベーション能力の向上」、並びに「情報化と工業化の高度な融合の推進」である。その鍵となるのは「コア技術の研究開発の強化」である。その目標達成のため中国は長年に亘りハッキング等により知的財産権を侵害してきており、現在トランプ政権による対中経済制裁の主目的は貿易赤字削減と同時に、中国による米国技術盗用の防止がある。

 我が国もかなり以前から中国のハッキングの対象となってきているが、サイバー・セキュリティーが弱く現在も技術流出が継続しているのが実態である。中国の昨年秋からの「微笑外交」の主目的はまさに我が国の先端技術の取得にあり、中国と取引をするに当たっては先ず企業秘密に対するセキュリティーを確保することが肝要である。また、政府としてもセキュリティー専門家の育成が喫緊の課題である。安倍首相が強調する「戦後最大の安全保障上の危機」は軍事に留まらず、広く経済、技術、社会、など多方面にわたり、既に国民生活を脅かしていることを肝に銘じなければならない。
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