国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-06-07 17:44

アフリカに触手を伸ばす中華帝国

太田正利  元駐南アフリカ大使
 最近のアフリカに対する中国の関心には、日本としても手をこまぬいて見ていることを許さぬものがある。事実、昨年11月には北京で「中国・アフリカ協力フォーラム北京サミット」(48カ国首脳会議)が開催され、アフリカ諸国の元首・首相ら41人が出席した。テーマは「友好、平和、協力、発展」で、中国・アフリカの「新型の戦略パートナーシップ」の強化・発展が討議された。この中で胡錦涛主席はアフリカ支援8項目を発表した。総額19億ドルの契約を締結、50億ドルの融資・信用供与のほか2009年迄にアフリカ支援を倍増するなどの方針を示した。さらに、本年5月には上海でアフリカ開発銀行総会を開催している。これには日米欧など域外24カ国も参加している。まさに、中国主演の舞台における引き立て役なのか・・・。中国は、アフリカの資源の確保を支援の見返りとしている。因みに中国は、2005年日本から政府開発援助(ここ数年間漸減している)の一環として、無償資金協力の14億4千万円、技術協力52億5百万円を受け取っている。

 在米の古森義久さん(産経)によると、ブッシュ政権には「中国のグローバルな台頭」に対する警戒心が滲みでている由だ。米下院国際関係委員会公聴会によれば、中国のアフリカ進出は積極的で、テロ支援・独裁国家にも接近しているという。スーダン、アンゴラ、チャド、ジンバブエ、ナイジェリア等々である。米国内には「米が対外政策では民主化を最大の支柱としているのに、中国は米側が敵視や警戒をする非民主化の傾向の強い国々を特に選んで接近している」と論ずる向きさえもあるようだ。現在中国は石油輸入全体の25%をアフリカに頼っている。あの大国が将来必要とすべき石油の量たるや恐るべきものであろう。鯨の如き消費力!彼らの天然資源への渇望は、アジア・太平洋を越え、カナダのみならず、遠くアフリカに迄も及んでいるのだ。

 そのアフリカだが、昨年末関連数字を見た筆者は、愕然たる感に襲われた。何と在アフリカの大使館数は、米45、仏45、英35、独36とある。欧州はアフリカの旧宗主国(アフリカは彼等の「裏庭」)だから驚くにあたらない。だが、中国は45館である。日本はというと24しかなく、しかもこのうち3館以外は定員15人未満という具合である。アフリカについては、「アフリカは重要だ」との虚しい掛け声があるのみで、現実には大きく改善されない状態が続いていた。大使館増設問題については、今回ボツワナ、マラウィ、マリの実館設置の予算措置が執られたようだが、問題は「数のみではない」という点にある。このままでは、アジア・太平洋のみならず、アフリカにまでも中国の勢力がのびていく趨勢にある。日本も、手遅れにならぬうちに、早急に総合的な対策を攻究すべきである。日本の対アフリカ認識はまだまだの状態なのだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム