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2007-06-13 10:10

G8温暖化対策合意、国際政治に変化も

鍋嶋敬三  評論家
 ハイリゲンダム(ドイツ)での主要国首脳会議(G8サミット)で温室効果ガス半減について合意したことは、国際政治の構造に変化をもたらした重要な出来事として将来記録されるかもしれない。G8は2050年までの地球規模での排出量を半減するという日本、欧州連合(EU)やカナダの提案を「真剣に検討する」ことで合意、2013年以降の「ポスト京都議定書」の枠組み作りには米国を含む主要排出国が加わり、2009年までに合意を目指すことで一致した。安倍晋三首相は会議後、記者団に排出量半減と主要排出国が入った枠組みの2点で日本の提案が受け入れられたことを高く評価した。

 地球温暖化は海面の上昇による国土の水没、砂漠化など人間の生活を脅かし、世界経済にも悪影響を及ぼしている。G8議長総括が「気候変動との闘いは人類の主要な挑戦の一つ」と指摘したように環境問題が世界的な政治課題であるという認識が深まってきた。京都議定書から離脱した米ブッシュ政権が削減の数値目標をめぐって鋭く対立してきた欧州と妥協して、国際的な合意に戻ってきたのは大きな意味がある。G8はまた「国連が交渉のための適切な場である」と確認した。米国はアフガニスタン、イラク戦争で単独行動主義を突っ走ったが、今回のG8で国際協調路線に振り子が振れたことが明確になった。

 安倍首相は内政では政治とカネ、年金問題で内閣支持率が政権発足以来最低を記録し苦境に立たされているが、外交では地球温暖化対策で大きな得点を上げた。サミット前に発表した「美しい星50」の提案で世界全体の排出量を現状に比べて2050年までに半減する長期戦略を掲げた。「ポスト京都」の国際的枠組み構築に向けて、(1)主要な排出国がすべて参加(2)柔軟かつ多様性のある取り組み(3)環境保全と経済発展の両立--の3原則を提唱した。主旨はG8首脳合意に盛り込まれ、日本の外交的成果として評価してよいだろう。

 問題はこれからだ。世界の排出量の22%を占める米国は2008年末までに主要排出国15カ国の参加国全体で長期的な数値目標を設定する方針を明らかにし、交渉の主導権を握ろうとしている。18%を排出しながら削減義務のない中国はインドなど新興国やアフリカ諸国と連携して「途上国」の立場でG8に対抗する構えだ。温室効果ガス削減をめぐる先進国と途上国のせめぎ合いが激しさを増すことは必至である。来年7月の北海道洞爺湖サミットで中国などの途上国をどこまで新たな枠組みに引き入れることができるのか、G8議長国としての日本の真価が問われる。
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