国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-09-03 16:26

中東の優等生・トルコの混乱

船田 元  衆議院議員(自由民主党)
 この数日間トルコのリラが暴落している。トルコ国内で拘束されたアメリカ人宣教師をなかなか解放しないとして、鉄鋼やアルミなど輸入品に上乗せ関税をかけるという、制裁を加えたことが直接の原因だ。「同盟国なのに何故だ?」「NATO加盟国なのにどうして?」という疑念が世界を駆け巡り、実態以上にトルコリラの価値が下がっているのである。

 トルコはアメリカにとって、中東で最も信頼してきた国だ。同様に信頼してきたサウジアラビアとの関係がギクシャクしている中では、その存在はさらに重みを増していたはずだ。両国関係の急速な悪化には、 アメリカ側に2つの理由があると指摘されている。一つは中東政策の「つまづき」である。7、8年ほど前にこの地域で民主化の波が押し寄せ、「アラブの春」と言われた。いくつかの独裁的政権が倒れたのだが、この動きを過大視したオバマ政権が民主勢力に肩入れし過ぎたため、かえって中東に混乱を招いたと言われる。このような一連の動きが、トルコのアメリカへの懐疑心を高めた可能性が高い。

 もう一つは中東政策の「方針転換」である。トルコはISの掃討とシリアのアサド政権打倒において、アメリカと協力関係を築いてきた。ところがアメリカはクルド人勢力を利用して、ISを封じ込める作戦を採用した。トルコとイラクの国境周辺に住むクルド民族の存在は、トルコを常に悩ませてきたという歴史がある。 アメリカの作戦に反発して、トルコはロシアに接近し、イランとも近づいているという情報もある。

 先般、再選を果たしたエルドアン大統領は、以前に比べて大変強権的に変容し、思想抑圧や人権侵害にも手を出すようになってきた。このことにもアメリカは警戒し始めているが、中東の優等生で第一の親米国が混乱していることは、中東情勢全体を極めて不透明、不安定に陥れてしまった。だからこそ経済の実力以上に、トルコ・リラの価値が下がり続けているのだ。さらにトルコの混乱は、新興国全体に波及している。彼らの対ドル通貨価値の下落は、多額の債務返済をより困難にしている。手を拱いていると、リーマン・ショック以来の混乱を招きかねない情勢である。あの時はアメリカが必死になって世界経済の大混乱を食い止めたが、今回トランプ政権は動こうとしない。国際社会全体が動かなければならない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム