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2007-07-16 12:42

中国残留孤児支援

大藏雄之助  評論家
 中国帰国孤児の問題では、力になりたくても署名以外に何もしてあげることができなくて悲しい。孤児たちは自発的に残ったわけではないから、「残留」ではなくて「遺棄」と言うべきであろう。当然国に責任がある。今回安倍総理の決断で緊急に支援が強化されたのはよかった。

 いつも思い出すのは宮本研の戯曲『花いちもんめ』だ。芝居は女性の独り語りである。「私」は日米開戦の前に大陸花嫁として満州に渡り、いろいろ苦労した末に、やがて生活も落ち着き、女児と男児が生まれました。そこにソ連軍が来ました。開拓団の役員だった夫は現地に残り、女子供だけがぼろぼろの姿で新京(長春)の難民収容所にたどり着きました。

 「私」は郊外の親切な農家から野菜を分けてもらい、それを町で売ってささやかに暮らしていたのですが、厳しい冬が訪れて、野菜もなくなりました。かんかんに凍ったある朝、「私」は娘を連れていつもの農家に出かけました。久しぶりの外出に娘ははしゃぎ、「花いちもんめ」の歌を歌いながら、先になったりあとになったりしました。この日の目的は、必ずいつか引き取りに来ると約束して、農夫に娘をあずかってもらうことでした。でも、なにがしかの金と引き替えに、実際には娘を売ったのです。収容所に帰ってみると、娘が前日に友達に「あたしはあしたから中国人のうちに行くのよ」と話していたことがわかりました。娘は何もかも知った上で、気丈に振る舞ったのでした。どんなに泣いてもどうすることもできません。

 それから長い歳月が流れました。血縁を求めて孤児たちが祖国を訪問するようになり、その中の一人の女性は手がかりになる品を持っていなかったけれど、係官の前で「花いちもんめ」の歌を歌って、「これでわかるはず」と訴えたそうです。「私」は四国の巡礼に出ました。肉親に巡り会えなかった孤児たちの飛行機がいま頭上を過ぎます。「私」は叫びます。「あなたには親はいない。どうか強く生きて」と。
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