3月29日、内閣府は40―64歳の引きこもり状態の人が全国に61・3万人いるという推計結果を公表した。内閣府は、2015年に15―39歳の「若年引きこもり」の実態調査を行い、その推定数を54・1万人と発表していたが、今回40―64歳の「中高年の引きこもり」について初の調査を実施したものだ。中高年引きこもり者の相当数は「就職氷河期世代」(現在の30代後半―40代後半)で、当時の雇用環境激変の影響が推測される。調査を担当した内閣府の北風幸一参事官は、日本全体の引きこもり総数は「100万人以上」になるとの見方を示した。 5月31日に総務省が発表した労働力調査結果によれば、4月時点の完全失業者は176万人で前年同期比4万人の減少、失業率は2・4%だった。これに引きこもりの100万人を加えると、4月時点で就業可能人口6720万人のうち、276万人が就労せず、またはしたくてもできずにいることが分かる。一方で、政府は足元の労働力不足と少子化の対策として、外国人労働者の受け入れ拡大を決め、10年10月時点ですでに146万人の外国人が日本で働いている。外国人労働者の必要性は分かるが、低い給与で働く彼らが日本人の雇用を奪っていることも事実だ。 外国人労働者の受け入れ枠拡大の前に、さまざまな理由から就労できずにいる276万人の日本国民が、それぞれの個性に合った形で社会に貢献できる環境づくりが先なのではないか。グローバルな産業構造変化の中で、各国が最も力を入れているのが教育訓練だ。OECD(経済協力開発機構)が18年9月に発表した教育機関への公的支出のGDP(国内総生産)比率を見ると、最も高いノルウェーが6・3%、フィンランド5・6%、アイスランド5・5%と続き、OECD平均は4・2%となっている。 それに対し、日本は何と前年より0・3ポイント少ない2・9%と極めて低水準だ。教育への公的支出が少ないため、日本は、経済構造の変化に人材がタイムリーに追いつけていない。さらに、経済的に余裕のない家庭の子供たちは、満足な教育が受けられないため、貧富の格差が次世代に引き継がれることになる。話は変わるが、20年の東京五輪招致成功の理由の一つが世界に冠たる日本の治安の良さであったといわれている。確かに日本の治安は世界最高レベルだ。17年の日本の犯罪認知件数は91・5万件で、02年の285万件をピークに15年連続で減少している。(つづく)
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