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2019-10-09 16:51

父祖の選挙区からの立候補を禁止せよ

伊藤 洋 山梨大学名誉教授
 こんな狂句が9月26日の「朝日川柳」に載っていた。「世の中を 動かしてこそ ナンボやで。」小泉進次郎氏を皮肉ったことで一時話題となった川柳である。その「小泉進次郎氏は9月11日の環境相就任後、発言が報じられる機会が増加。福島県いわき市で十七日、記者団に東京電力福島第一原発事故による汚染土の最終処分場について問われた際には『三十年後の自分は何歳か、発災直後から考えていた。健康でいられたら(県民との)その三十年後の約束を守れるかどうかの節目を見届けることができる政治家だと思う』と答えた」(2019年9月24日付け『東京新聞』より抜粋)。これは、新聞が放つ鬱憤ばらしのタメにする野次記事である。そう思いながらも、「よくぞ書いてくれました」と快哉を叫びたくなる記事でもあったのである。おそらくこの小泉氏の発言は、政府が福島県に対してした福島県の大量の原発汚染土を30年以内に他府県のどこか最終処分場へ運び出すという、出来もしない「公約」が遠因となっている。その実現性について何も言えない氏の無力感が文字通りの「迷い言」となって口から飛び出してきたということだ。

 精一杯虚勢を張って未熟な政治家が語らねばならない、そういう無理がこういう「話法」を使わせたのだ。ネット上では、①「赤を上げて、白を下げないとどうなると思いますか?そう、赤と白が、上がるんです」、②「年末年始。年の瀬。師走。こういう言葉を聞くたびにね、いつもこう思ってきました。もうすぐ新年だな、と」、③「皆さん、私は、みなさんに、十二時の七時間後は七時であり、十九時でもあるということを真剣にお伝えしたい」等々、この若い政治家の特徴を捉えた言い回しで、よく聞くと意味がわからないコメントを創作する投稿が盛り上がり話題になっている有様だ。

 根本的な問題は、小泉進次郎氏が、自身が持つ才能や努力によって政界に参入したわけではないということによるところが大きい。彼は、何代も続く政治家一家に生まれ、「チバン・カンバン・カバン」の「サンバン」が用意された世襲議員である。その「貴種性」とカッコヨサを有難がる程度の有権者によって実質的な資質を審査されることなく当選しているため、世襲を肯定的に捉える感覚が希薄な人々が増えてきた今、きつい皮肉を蒙るのである。なによりも、このシステムはヒューマニズムに反する。

 英国下院のように、先祖の地では立候補できないバリアを制度としてもっていたら、小泉氏もかくのごとき侮蔑を受けずに済んだことであろう。今、この国の衆議院のわけても自民党現職議員の約半数が二代目・三代目のサンバン議員。内閣中枢に限れば世襲議員は90%を超え、その結果、国民は質の低下した政治しか享受できなくなっている。自分の才能と努力によってのみ議員の椅子を勝ち取ろうとする者がその立候補や当選においてサンバンを持つものに対して不利となることは、国民にとっても好ましいことではない。憲法問題を論ずるなら「いの一番」に、父祖の選挙区からの立候補禁止の選挙制度を議論してもらいたい。そこが一丁目一番地だ。
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