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2007-08-07 14:51

連載投稿(1)インド人の親日性は筋金入り

平林博  日本国際フォーラム参与・元インド大使
 世界中がインドに注目している。巨大な、しかも若い人口。欧州全体に比肩する広大な国土。急速な経済成長と増大する中間階級がもたらす巨大化する市場。途上国の雄であり、国連システムの内外で発信する国際的な発言力の強さ。カースト制度が根強く残るが、政権交代は必ず民主主義的な選挙を通じて行われ、自由なマスコミが立法府や行政府を批判、監視し、優れた司法制度が最後の砦として控える(人口が)「最大の」民主主義国。ついに目覚めた巨象は、今や躍動感であふれている。
 
 著者が4年半の間、インドに住んで実感したのは、インド人の親日性である。それは、筋金入りである。19世紀から20世紀にかけて独立を希求して英国と戦っていたインド人は、明治維新後のわが国の急速な発展や日露戦争の勝利に、自らの将来を重ねて見た。後に首相となるネルーは、娘インディラ(彼女も後に首相)に当てて書いた「娘に語る世界史」の中で、アジアの新興国日本がヨーロッパの大帝国ロシアを破った感動を伝えた。第二次大戦前から大戦中にかけて、二人のボース(スバス・ボースとチャンドラ・ボース)は、インド独立を目指してわが国を頼った。敗戦国日本に対し戦後賠償を放棄し、戦争で希望を失いかけた日本の子供のために愛娘インディラの名をつけた小象を送ってきたのは、ネルー首相であった。極東軍事裁判で、一人少数意見をもって判決に反対したのは、インド人のパル判事であったことは誰でもが知っている。パル判事は、法律家として法理論も展開したが、その心の底には、正義感と親日感情があったことは確かである。おそらく欧米先進国への反発もあったであろう。

 インド人の親日感情の中には、インド生まれの仏教を大切にしてきた日本人への精神的一体感もある。仏教は、今日インド人の85%が信仰するヒンズー教の元となったブラマン教を、宗教改革家であり実践者であったシャカムニが改革し発展させたものである。いわば、インド人にとって、仏教はヒンズー教の「弟」なのである。わが国を、実態はともかく、仏教国と見るインド人は、それだけでも親近感を持つ。ここ数年、ヒンズー教至上主義が強まり、イスラム教やキリスト教を目の敵にするようになったが、彼らも、仏教徒には危害を加えない。もっとも、カースト・システムの桎梏を逃れようとする下層カーストやアウト・カースト(俗にアンタッチャブルと呼ばれる)の一部が、迫害を逃れて仏教に集団改宗する例があとを絶たないが、彼ら「新仏教徒」に対しては、ヒンズー至上主義は白い目を向ける。
 
 著者は、1998年3月から2002年10月まで、日本の大使として日印外交の第一線にたったが、インド赴任直前に行われたインドでの世論調査が示した親日度にまず感銘を受けた。その調査によると、世界の主要国の中で、最も好きな国も、最も行きたい国も、日本であった。その後、1998年5月の核実験があり、わが国との関係を含め、インドと各国との関係も悪化した。対外関係が改善するのは、2000年以降である。私も、この間多くの苦心をした。インドの国内改革も徐々に進み、グローバライゼーションへの適応が加速した。インド自身が変わったため、インドの各国を見る見方も変わってきた。今日では、国際場裏で、インドは注目の的になった。特に、9・11以後、テロとの戦いを重視する米国との関係改善は著しい。今日では、インド人がもっとも行きたい国は米国であろう。最近のインド外交の優先国は、一に米国、二に英国、三に日本、ロシア、フランスが並ぶ由。中国は、これらの後塵を拝する。(つづく)
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