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2020-05-20 21:56

(連載1)ソフトバンクグループの躓きに見る世界経済の暗雲

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 ソフトバンクグループ株式会社は本業は何かはっきりしない会社だ。子会社のソフトバンク株式会社が携帯電話を売っている(ユニークな内容のCMで知られるようになった)ということは誰でも知っているが、それは5000億円程度の規模だ。ソフトバンクグループ株式会社自体は「36兆円の資産を持っている」と主張している。私たちがよく知っているソフトバンク株式会社の「本業」はグループ全体の資産の70分の1程度だ。このソフトバンクグループの「資産」をよく見て見ると、そのほとんどは「無形固定資産(知財=のれん=ノウハウ)」だ(副島隆彦『もうすぐ世界恐慌 そしてハイパー(超)インフレが襲い来る』、167ページ)。ここでの問題はソフトバンクグループの投資先だ。
 
 ソフトバンクグループの投資先企業、ウィーワーク、ウーバー、オヨといった企業には問題が多い。更に、ソフトバンクグループはソフトバンク・ビジョン・ファンドという投資会社を作っているが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが資金提供を受けているのはサウジアラビアのムハマンド・ビン・サルマン皇太子だ。サルマン皇太子からは4兆円の資金提供を受けているが、皇太子からの資金に対して年間7%の利回りを保証している。これは年間2800億円をサルマン皇太子に支払わねばならないということを意味する。
 
 ソフトバンク・ビジョン・ファンドが持っている中で優良なのは中国のアリババ集団の株式14兆円くらいのものだ。アメリカの通信会社スプリント社を買って失敗、イギリスの半導体会社アーム社を買って失敗という状況もある。そうした中で借金(社債と銀行融資)はどんどん膨らんでおり、総額は27兆円となっている。その内の17兆円はみずほ銀行が貸し付けている。孫正義氏はスプリント社の買収やアメリカへの500億ドル(約5兆4000億円)規模の投資を当選直後のトランプ大統領に約束した。スプリント社は全米屈指の通信会社と言えば聞こえはいいが、実際にはヴェライゾンなどからは大きく置いていかれている。そんな会社をどうして買ったのかは全くもって不思議だ。また、アメリカへ投資もよく分からない。
 
 こうしたことは、孫正義氏の「親分」が投資会社ブラックストーンCEOスティーヴン・シュワルツマンとであるということが分かるとなるほどと納得できる。先程引用した副島隆彦氏の著書にははっきりと孫正義がシュワルツマンの忠実な子分であること、シュワルツマンはデイヴィッド・ロックフェラーの意向を受けて動く忠実な番頭格の子分であったことが書かれている。同氏が指摘するのは、農林中央金庫とゆうちょが持つ大切な資金が、アメリカの危険な債券に投資されているという実態だ。ローン担保証券(CLO)という金融機関が信用力のない企業などに対して貸し出している貸付債権を証券化したものだ。これはサブプライムローンのように焦げ付く危険性が高いものだ。(つづく)
 
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