筆者は、本年5月以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内感染状況を日別に整理し、感染状況がターニング・ポイントを迎えたと思われた同月9日に、それまでの変遷を数字で一覧にした上、グラフに示した(e-論壇「百花斉放」2020年5月9日付)。その後、約10日が経過したが、9日時点で指摘した傾向が確実なものと確認されたため、今回、改めて5月20日までの感染状況をまとめたところ、下記一覧とグラフのとおりとなった。
幸いにして、9日時点で指摘していたことがおおむね的を得ていたことが実際のデータで裏付けられたかたちとなった。とくに、10日に新規感染者数が3桁を割って以降、その数は明確に減少しつづけた一方、回復者の数は、一日に最低でも166人、多い日には1,000人に迫ろうとする勢いで増加している点が非常に重要である。また入院者数も、20日時点で3,033人となり、一時の1万人を超えた状況からその3割にまで減少したことになる。これらの数字が意味するところは、逼迫していた医療現場のキャパシティが大幅に改善したということだ。下記のグラフから感覚的に掴んでいただけると思うが、5月以降日本の新型コロナウイルス感染症のパンデミックはほぼ完全に抑制されるとともに、医療崩壊は回避され、入院者への加療が適切に機能していることがわかる。
ただ統計的にそうだということはいえても、なぜそうなったのかということは必ずしも明らかではない。実際に、欧米では日本が新型コロナウイルスをコントロールしつつあることに対して、これといった対策は見られないなか、「奇妙である」との評価が広がっている。当の日本政府もなぜ自国のコロナ対策が功を奏しているのか、医学的に充分に説明できていない。
これは裏を返せば、これまでの感染抑止の「成功」体験を理論化しえない以上、現下の収束傾向をくつがえす感染拡大の第二の波、第三の波が発生した場合に、何かの条件が異なることで、現在のような感染抑止をまったく再現できないおそれがあるということだ。当初の医療崩壊の危機は乗り切ったとはいえ、安心するのは時期尚早である。
1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。 なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。
2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。
3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。
4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。 とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。
5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。
6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。