国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-09-09 22:42

(連載1)ロシア改憲「領土割譲禁止条項」をめぐる袴田茂樹氏の見解に思う

加藤 成一 元弁護士
 ロシアでは7月4日「領土割譲禁止条項」を明記した改正憲法が公布された。それに伴い、領土の割譲に向けた行為を違法とし、最大10年の禁固刑が科されることになった。これは北方領土の返還を悲願とする日本にとって衝撃である。
 
 ロシアが今回、憲法に領土の割譲禁止を掲げた理由は、ロシアが併合したクリミア半島の返還を求めるウクライナや欧州に対抗する姿勢を示し、プーチン政権の求心力を高める狙いがあったためと考えられる。ただし、改正憲法の領土割譲禁止条項には、「領土割譲」ではなく「国境線画定」は例外とされており、領土交渉の余地を残している。ロシアは軍事衝突した中ロ国境紛争で2004年「国境線画定」により譲歩し解決した事例がある。しかし、プーチン氏の側近であるボロジン下院議長や、外務省サハロフ報道官は、日本との北方領土問題は改正憲法の「領土割譲禁止条項」に該当し、その「例外」ではないと明確に述べている。
 
 今回の領土割譲を禁止した改正憲法について、ロシア問題の権威であられる袴田茂樹日本国際フォーラム評議員は、9月1・2日付「百花斉放」掲載の「新憲法の領土割譲禁止条項に北方領土は該当するか」において、プーチン大統領はもともと北方領土を日本に返還する意思がないのに、いわば「疑似餌」として、日本から北方領土における経済協力等の実利を得るため、返還の意思があるかのように装って日本との「領土交渉」を続けてきたとの趣旨を述べられ、北方領土問題は改正憲法の「領土割譲禁止条項」に該当する可能性が大きい旨主張しておられる。
 
 筆者も、袴田氏が主張される、「領土交渉」における所謂「疑似餌」の側面があったことを全面的に否定はしない。しかし、安倍首相とプーチン大統領との前後27回にも及ぶ「領土交渉」のすべてが、ロシア側に領土返還の意思が全くない「疑似餌」のみであったと、筆者は考えない。(つづく)
 
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム