国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-09-04 23:01

死刑に賛成する理由について

苦瀬雅仁  大学教授
 8月31日付けの吉田康彦氏の投稿「なぜ死刑に賛成なのですか」に答えたいと思います。私が死刑制度の存続を支持する理由は、次の2点です。
 1.死刑には、犯罪抑止の効果がある。
 2.冤罪は、それを避けるための最大の努力をすれば、避けることができる。

 まず、犯罪抑止の効果について言えば、統計から正確に分析するのはきわめて困難な面があり、「死刑が廃止になった後に犯罪が増えていない」ということが、直ちに「抑止力がない」ということの証明にはならないと考えます。他の要因にもその前後に変化があったでしょうから、それらによる減少と死刑廃止による増加傾向が相殺されていないか、といったことが厳密に立証されて、初めてそのような論は意味を持つと考えます。他方「ここで殺したら自分も死刑になるかもしれない。やはり殺すのはやめよう」とすべての犯人が思うわけではないとしても、いくらかの割合でそういう人がいれば死刑は抑止効果を持つことになります。そう思う人間が全くいないということが考えられるでしょうか?「産経抄」で取り上げられた事案についても、実行された一件目については抑止効果がない結果となったものの、その後に引き続いて行われ得た犯罪はこれで抑止されたと言えます。

 殺人をする場合にも、やむをえない理由や偶然に近い事情などさまざまありますから、すべてを死刑にせよとは言いませんが、非常に残忍で、身勝手で、相手に殺されるべき非はまったくないのに殺人を犯し、しかも心からの反省がない、というような人物はいます。そういった中には再犯の可能性が高い人物も多いわけです。そういった犯罪人を死刑にすることを躊躇することで、善良な市民の命が脅かされるような状況は避ける必要があります。現に殺人・服役後に出所して、再び殺人を犯すという例はしばしば発生しています。

 冤罪問題については、冤罪の可能性がまったくない場合にのみ死刑にすればよいのであり、また仮に死刑ではなく終身刑を課したとしても、冤罪で人生を奪われることにはなんら変わりなく、死刑は冤罪を避ける問題とは別問題として、当然に必要であると考えます。さらに、私人間の報復を禁じ、国家が刑罰権を独占している以上、残虐な殺人行為等に対する正当な報復としても死刑は許されるべきであり、さきほどの犯罪抑止・予防の観点ともあわせ、死刑は認められるべきであると考えます。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム