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2020-12-08 21:21

(連載1)日米開戦を「パワー・シフト理論」から読む

加藤 成一 元弁護士
 1941年12月8日の太平洋戦争の開戦から79年目を迎えた。日米開戦については、学界、言論界、政界をはじめとして、日本では現在も「軍部暴走説」など、否定的な評価が多い。当時、生産力や軍事力など、総合的な国力において日本に比べて明らかに優勢であった米国との戦争は無謀であり、1945年8月16日の敗戦はその結果であったとの評価である。筆者もその評価を全面的に否定するものではない。しかし、「日本の積極的な侵略戦争」という短絡的な結論で、今日という日を省みるのをやめるべきではない。「大日本帝国を思い起こさせる」とも囁かれる中国の現在地を測り、以て日本国の将来に思いを致す好材料となるからである。
 
 日米開戦の世界史的本質は、以下に述べる理由により、中国及び東南アジアにおける資源と市場の争奪をめぐる、後進資本主義国である日本と、先進資本主義国である米国との間の覇権戦争であったと評価すべきであろう。
 
 日本は1867年明治維新により開国して以来、いち早く近代化を達成し、1895年日清戦争、1905年日露戦争にそれぞれ勝利し、1910年韓国を併合し、1932年満州国を建国し、資源と市場の確保を求めて中国、東南アジアに進出して、経済的・軍事的に「アジアの盟主」たる地位を確立した。このような後進資本主義国である日本の急速な中国、東南アジアへの経済的・軍事的進出は、かねてより同地域における資源と市場の確保のために、香港・インド・シンガポールを植民地化する英国や、フィリピンを植民地化する米国に強い危機感を与えた。
 
 とりわけ、1932年の満州国の建国以後、中国や東南アジアに破竹の勢いで進出する日本に対し、先進資本主義国である米国は、彼我の「パワー・バランス」の急激な変化とアジアで起こる覇権交代の可能性を実感し恐怖したのである。日本の膨張を阻止するため、米国が対日強硬政策をエスカレートさせたのは必然とも言える。(つづく)
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