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2021-03-18 21:38

(連載1)発露するバイデン政権の「人道的介入主義」

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 ジョー・バイデン政権の閣僚人事で重要なのは、国務長官や財務長官といった重要閣僚の人事ではない。私が注目しているのは気候変動問題担当大統領特使のジョン・ケリー(1943年-、77歳)とアメリカ国際開発庁(USAID)長官のサマンサ・パワー(1970年-、50歳)だ。今回はサマンサ・パワーを取り上げる。
 
 拙著『アメリカ政治の秘密』の中で、私はサマンサ・パワーを取り上げた。彼女は2008年の大統領選挙でオバマ選対に入り、民主党予備選挙でヒラリー・クリントン陣営と激しい戦いをする中で、イギリス・スコットランド地方の新聞のインタビューを受けた際に、ヒラリーを「彼女は怪物よ、もちろんこれはオフレコでお願いね」と発言したことが、そのまま掲載されたために、選対を離れることになった。オバマ政権では国家安全保障会議のスタッフになり、オバマ政権二期目には、閣僚級の米国国連大使に任命された。
 
 パワーは1990年代に、20代でジャーナリストとなり、民族紛争が激化していた当時のバルカン半島を取材した。そして、2002年に最初の著作『集団人間破壊の時代』を出版した。これが2003年にピューリッツァー賞一般ノンフィクション部門を受賞する。そこで高い知名度を得た。USAIDの予算規模は2016年の時点で272億ドル(約2兆9000億円)、人員は約4000名だ。「庁(Agency)」となっているが、「省(Department)」クラスの規模だ。ここに人道的介入主義者のサマンサ・パワーを長官に持ってくる。その意味は大きい。
 
 更に言えば、バイデン政権から、USAID長官も国家安全保障会議(NSC)にも出席できるようにする、ということになった。ここが重要ポイントだ。国家安全保障会議は縦割りの弊害をなくし、大統領のもとで、外交や国家安全保障政策を一元化するための会議であり、アメリカにとっても世界にとっても最重要の会議である。議長は大統領であるが、実際の差配は国家安全保障問題担当大統領補佐官が引き受ける。もっと細かいことは国家安全保障問題担当次席大統領補佐官が行う。これまでの正式な出席メンバーは以下の通りだ。●議長:大統領、●法的参加者:副大統領、国務長官、国防長官、エネルギー長官、●軍事アドバイザー:統合参謀本部 (JCS) 議長、●情報関係アドバイザー:国家情報長官、●定期的参加者:国家安全保障問題担当大統領補佐官、首席補佐官、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官、●追加参加者:財務長官、司法長官、国土安全保障長官、ホワイトハウス法律顧問、アメリカ合衆国国家経済会議委員長、米国国連大使、アメリカ合衆国行政管理予算局局長。(つづく)
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