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2021-06-03 17:23

コロナ禍でも東京五輪は開催可能だ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 今年7月23日に迫った東京2020オリンピック・パラリンピックの開催をめぐっては、最近の世論調査を見ると開催中止や延期を求める意見が圧倒的に多い。これは、最近のインド変異型ウイルスを含む新型コロナウイルス感染症の全国的蔓延の状況が背景にある。しかし、筆者は以下に述べる三つの理由により、東京2020オリンピック・パラリンピックは開催可能であると考える。
 
 第一の理由は、最大のコロナ対策であるワクチン予防接種が今後日本国民の間で急速に拡大普及し、2か月後の開催時点では新規感染者が激減している可能性があるからである。今年2月17日から始まった約470万人の医療従事者等への接種が終わり、5月24日から約3500万人の65歳以上の高齢者等に対する接種が大規模に行われており、これと並行して会社や職場、学校等でも年齢を問わず広く接種が行われる見込みである。首相官邸によれば、5月26日現在、ワクチン接種回数は医療従事者等705万回、高齢者等354万回、接種人数は1回接種760万人、2回接種298万人にのぼる。ワクチン接種は今後さらに加速度的に拡大普及するであろう。そのうえ、日本政府が承認した米国ファイザー製ワクチンの発症予防効果は2回接種で94.6パーセント、米国モデルナ製ワクチンでは94.1パーセントであり、発症予防効果及び重症化予防効果は極めて大きい。そのため、欧米諸国の実情を見ても、ワクチン接種の拡大とともに新規感染者数が大幅に減少している。日本でも今後、ワクチン接種が加速し拡大普及すれば、2か月後の東京オリンピックの開催時点では、新規感染者数は激減している可能性がある。
 
 第二の理由は、政府による今回の緊急事態宣言発令の効果により、東京、大阪をはじめとして全国的に新規感染者数が半減したことと、主催者であるIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長やコーツ副会長(調整委員長)が、日本の緊急事態宣言下でもオリンピックは開催可能であると断言していることである。これは、この数年間、新国立競技場をはじめ、莫大な費用と人材を投入し開催準備に邁進してきた日本側に配慮した面があり、開催国の日本にとっては素直に歓迎し感謝すべきIOCとしての決意と言えよう。その背景には、東京2020オリンピック・パラリンピック招致に多大の功績があり、バッハ会長らとの間で信頼関係を築いた前大会組織委員会会長の森喜朗元総理、安倍晋三前総理をはじめ、大会関係者の尽力があったからと言えよう。第三の理由は、上記第一、第二の対策により新規感染者数が激減すれば、医療現場の逼迫状態が改善されるのみならず、大会出場選手約1万5000人、大会関係者約7万8000人とされるが、選手を含む入国者のワクチン接種と、徹底したPCR検査の実施、厳格な行動制限などの水際対策と危機管理を徹底し万全を期すれば、海外からの日本国内へのインド変異型ウイルスを含む新型コロナウイルス感染症蔓延の防止が可能だからである。そのうえ、緊急事態宣言下においても日本では、相当数の観客を入れてプロ野球、大相撲、ラグビー、水泳、プロゴルフ等も現に行われているのであり、そのために特段クラスター(集団感染)が発生したとの事例も報告もない。したがって、オリンピックに限って無観客でなければならない特段の理由はなく、マスク着用と「3密」に留意すれば、上記スポーツ観戦と同様に、一定数の観客を入れての開催も十分に可能であると言えよう。
 
 ところで、日本共産党はもともと東京2020オリンピック・パラリンピックの招致にも開催にも、税金の無駄使いでありその予算は福祉に回わすべきなどと主張して絶対反対だった。そのようなオリンピック招致絶対反対の共産党から支援を受けて何度も東京都知事選に立候補し落選した元日本弁護士連合会会長がオリンピック開催中止の署名運動を展開し、5月14日約35万人分の署名簿を持参して、国や東京都に対して開催中止の申し入れをした。これに対して、小池百合子東京都知事が記者会見で「オリンピック開催とコロナ対策を両立させる。」と明言したことは心強い。共産党やこれに同調する立憲民主党などの一部野党は、日本国の威信をかけた国家的事業である東京2020オリンピック開催中止を、菅内閣打倒のための手段にしていると言えよう。なぜなら、もともとコロナ禍がなくても共産党はオリンピック招致自体に絶対反対だったからである。また、オリンピック開催中止を主張する有名企業の社長も散見されるが、商売上の大切な顧客でもある一般国民の世論に迎合し忖度している印象は否めない。さらに、東京オリンピック「開催都市契約」によれば、オリンピックの主催者はIOCである。したがって、IOCが開催を決意している以上は、新型コロナ感染症蔓延が理由とはいえ日本側の都合で一方的に中止を決めた場合は、IOCが日本側に対して損害賠償を請求する可能性があるから、開催中止を強硬に主張する政治勢力の側はこの点を無視すべきではない。もし、日本が、世界的なコロナ禍での困難な条件にもかかわらず大会を開催し成功させれば、日本国及び日本国民は、平和の祭典としてスポーツを通じて世界の人々に勇気と希望を与えるのであり、オリンピック・パラリンピックの歴史に永くその栄光が刻まれるであろう。日本国民は、今こそ力を合わせ一丸となって、東京2020オリンピック・パラリンピックを開催し成功させようではないか。
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