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2021-09-07 21:22

(連載1)菅首相退任を機に「首相公選制」を検討する

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 9月3日菅首相は突如自民党総裁選不出馬すなわち首相退陣を表明した。突然の退陣表明ではあるが、最近の全国的なコロナ感染症爆発による自宅療養者激増などの医療崩壊、それによる国民の切実な不安や不満の高まり、内閣支持率の急落、「菅首相では選挙を戦えない」という自民党中堅若手議員を中心とする党内外の批判の高まりなどがその背景であろう。
 
 最近の全国的なコロナ感染症爆発に対し、ワクチン接種のほかに菅政権の対策が手詰まり状態であることなどを考えればやむを得ない決断と言えよう。しかし、この1年、菅首相の最大の功績は、コロナ禍という困難な状況下での東京2020五輪の開催と成功であると筆者は考える。日本が五輪開催という国際的約束を果たしたと言えるからである。
 
 今回、菅首相退陣を余儀なくさせた最大の要因は、8月26日岸田文雄元外務大臣の総裁選出馬表明である。岸田氏は出馬表明に当たり、自民党役員人事の若返り刷新と党改革などを主張し、中堅若手議員の積極的登用や5年以上も幹事長職にある二階幹事長の事実上の更迭を求めた。これは自民党に対して中堅若手議員を中心に大きなインパクトを与えた。そのため菅首相は、総裁選勝利のために「二階更迭」を余儀なくされたが、それに伴う総裁選前の役員人事や内閣改造、早期解散戦略に党内から猛反発を受け、自ら墓穴を掘った。菅首相による解散総選挙では自民党単独過半数割れ、最悪の場合は政権交代の可能性もあると言われていたから、菅首相退陣で自民党の危機を救った功労者は紛れもなく岸田文雄氏であり、現時点で総裁選は岸田氏を中心として展開されよう。
 
 菅首相が僅か1年で退陣を余儀なくされたのは、ここにきて感染爆発を招いた後手後手とされるコロナ対応もさることながら、根本的には政権選択である総選挙による国民の審判を受けていないからである。日本のような議会制民主主義国家では、全国民から国政選挙で信任されて初めて首相としての「正統性」が認められるのである。安倍政権が7年を超える長期政権となったのは合計6回の国政選挙にいずれも勝利し、国民から政権担当の「正統性」が認められたからに他ならない。その意味では、次期自民党総裁兼首相も総選挙による国民の審判を受けて初めて国民から政権担当の「正統性」が認められるのであるから楽観は禁物である。(つづく)
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