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2022-07-19 16:04

(連載1)なぜ日本共産党は選挙のたびに衰勢するのか

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 日本共産党は、今回の参院選で得票数、得票率、獲得議席数が、前回、前々回の参院選に比べて減少した。政党の実力を示す比例代表選での得票数361万票、得票率6・8%であり、選挙区を合わせた獲得議席数も改選議席数6名から4名に減らした。共産党は比例600万票以上獲得を目指していたので、明らかに敗北と言えよう。この選挙結果を見ると、党創立100年の歴史を誇る共産党は、れいわ新選組の得票数231万票、得票率4・4%、獲得議席数3名にも迫られていることや、国政選挙初挑戦の参政党が共産党の約半分の176万票、得票率3・3%、獲得議席数1名と敢闘したことを考えると、共産党自身の存在意義すら問われよう。
 
 共産党敗北の第一の原因は「党勢衰退」にあると筆者は考える。近年共産党の党勢衰退は顕著である。党員数は平成2年(1990年)の約50万人から現在は約27万人に、機関紙「赤旗」発行部数は昭和55年(1980年)の約350万部から現在は約100万部にそれぞれ減少している。そのうえ党員の高齢化が進んでいる。こうした党勢の衰退が得票数や得票率の低下、獲得議席数の減少をもたらしている。ちなみに、2016年の参院選の得票数は601万票、得票率10・7%、2019年の参院選の得票数は448万票、得票率9・0%、今回の参院選は上記の通り、得票数361万票、得票率6・8%と、国政選挙のたびに衰勢している。
 
 その最大の理由は、マルクスが主張する「資本主義が発達すればするほど労働者階級は窮乏化する」という「窮乏化法則」が破綻しているからである。すなわち、共産党が「マルクス・レーニン主義」(科学的社会主義)に基づき、党綱領で目指す階級闘争による社会主義革命にとって不可欠な労働者階級の窮乏化が起こらず、逆に労働者階級の生活水準や消費水準が向上しているからである(2022年4月29日「百花斉放」掲載拙稿「なぜ資本主義は崩壊しないのか?その原因を究明する」参照)。
 
 日本では、男女の賃金格差や非正規雇用の増加などの課題はあるが、生産力の発展による持続可能な経済成長で失業率が低下し(2022年完全失業率2・6%総務省統計局調査)、名目賃金も年々上昇し(2022年春闘賃上げ率2・11%連合発表)、年金・医療・介護など社会保障制度も整備され、労働者階級の生活水準及び消費水準は向上している。マイホーム・マイカー・電化製品・海外旅行などは労働者階級の間でも普及している。このため、「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」(マルクス著「ゴーダ綱領批判」渡辺寛訳131頁。河出書房新社)という共産主義の理想は、日本社会ではすでに魅力を失っていると言えよう。すなわち、失業率が低下し、市場では商品が有り余り、いつでもどこでも誰でも手軽に手に入る時代である。企業間の価格競争が機能し商品の価格も比較的安定している。労働者階級の失業・貧困が減少し、生活水準の向上により、労働争議(ストライキ)も激減している(1974年1万1000件、2019年数十件。厚労省労働争議統計)。(つづく)
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